【越山若水】昆虫採集に夢中だという偉い人の代表格が養老孟司さんだろう。ある年には1万頭以上のゾウムシを手に入れ「暇さえあれば標本を作っている」とブログに書いた▼虫も「頭」と数えるのだと教わって新鮮だった。とはいっても、どうして頭なのか。たぶん、一体に頭は一つしかなく、しかも個体をよく表すからなのだろう▼しかしこの場合は悠長に観察してはいられない。三国、金津、武生の3高校にあった標本は、人の本物の頭蓋骨らしい。事件性や来歴をはっきりさせねばならない▼その後も大事だ。うっかりすると死体遺棄という犯罪になりかねないという。いまさらながら、死者の尊厳が社会的に大切に守られていることを思い知らされたニュースである▼実は英国の高校でも同じような話があった。長年「アーサー」と親しまれていた標本を専門家に鑑定してもらったら、100年ほど前に死亡した青年男性の頭蓋骨だと分かった▼そこでどうしたか。生徒も参加して埋葬式を営んだ、と4年前の本紙「海外こぼれ話」は伝えた。死者を弔う心はいずこも同様、と思ったものだ▼ところが、イタリアなどには室内を全て人骨で装飾した寺や、ゴロゴロと放置した墓がある。冒頭の養老さんが著書で紹介している。それらを渡欧のたびに巡る。いかにも解剖学者だが、なぜそうするのかは自身も分からないそうだ。

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