【論説】日韓関係が泥沼化の様相を呈している。韓国海軍の駆逐艦による海上自衛隊哨戒機への火器管制レーダー照射問題は非難の応酬が激化。韓国の元徴用工損害賠償判決では原告側による日本企業への資産差し押さえ申請を巡り、両国の確執が続いている。解決は見通せない状況にあるが、対立激化は両国にとって何の益にもならない。早急に打開の道筋を模索すべきだろう。

 レーダー照射問題は、防衛省が年末に自衛隊機からの動画を公開。これに対して韓国国防省は即座に「事実関係をごまかしている」と反発し、自国の主張を交えた動画を公表するなど全面的に対決する構えを見せている。ただ、専門家がこの動画を見る限り、韓国が主張する「自衛隊機の威嚇的な低空飛行」はないというのが専らだ。

 当初の段階で両国は外務省局長級会談や防衛実務者のテレビ会議で収拾を図ろうとしたが、不調に終わった。韓国の強硬姿勢に拍車を掛けたのが、安倍晋三首相による動画公開の即断だったとされる。外務省幹部が「韓国を追い詰めすぎると、余計に韓国が引き下がれなくなる」と指摘したような状況に陥った印象が否めない。

 韓国調査会社の先月の世論調査で、文在寅(ムンジェイン)政権の不支持率は46%で支持率(45%)を初めて上回ったという。最低賃金の大幅引き上げが人件費増につながるなど、雇用や消費の悪化、景気の減速を招いたとの批判からだ。こうした中、日本に対し弱腰外交を見せれば、さらに支持率減を加速しかねないとの思惑が働いたとしてもおかしくない。

 一方、元徴用工問題では、韓国政府関係者によると、外務省など関係省庁が次官級会議で判決への対応策を検討しているとされる。しかし、判決から2カ月余りがたっても何ら具体的な方策は示されない。資産差し押さえが現実味を帯びる中、安倍首相が「日韓の請求権問題は解決済み」との立場から対抗措置を検討するよう関係省庁に指示したのもやむを得ない。

 韓国政府は昨年、元従軍慰安婦問題を巡って2015年の日韓政府間合意により発足した「和解・癒やし財団」の解散を決定し、合意を白紙化させた。さらに韓国の超党派国会議員団が2度にわたって、日本と領有権で対立する竹島(島根県、韓国名・独島)に上陸を強行した。両国関係を冷え込ませる懸念材料は積み重なる一方だ。

 だが、文大統領から事態を解決しようとするメッセージは一向に発信されない。10日の新年会見で対日関係について考えを表明する可能性があるが、歴史問題で日本に譲歩を示すのは難しいとの見方が大勢だ。

 前のめりとされる北朝鮮問題では経済制裁を巡って米韓関係もぎくしゃくしている。日米韓の協調があってこそ、北朝鮮を非核化へ誘導できるはずだが、その土台が揺らぐようでは進展は望めない。拉致問題解決を最重要視している安倍政権も強行一辺倒ではすまされないとみるべきだろう。

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