【論説】「各国からわが国に来て仕事をする人々を、社会の一員として私ども皆が温かく迎えることができるよう願っています」。天皇陛下は85歳の誕生日に際し会見でこう触れられた。4月から受け入れがスタートする外国人労働者の新制度を見据え「寛容さ」を国民に求められたのだろう。改正入管難民法の審議では「労働力」としか見ないような安倍政権の不寛容さが際立った。米中の貿易摩擦など世界にもそうした傾向がまん延している。「平成」から新しい元号に改まる日本は無論、世界にとっても寛容さが何より求められているのではないか。

 ■参院選が関門■

 国内では4月30日に天皇陛下が退位、翌5月1日に皇太子さまが新天皇に即位される。昭和から平成に改元された時には、昭和天皇の逝去に伴って自粛ムードが広がったが、譲位となる今回は祝賀ムード一色に包まれるはずだ。12年に1度重なる4月の統一地方選と夏の参院選、10月には消費税増税といった大きな節目も迎える。

 安倍晋三首相は11月に在職日数で戦前の桂太郎を抜いて歴代最長となる。2021年9月までの任期中にレガシー(政治的遺産)づくりに力を入れることになろう。その主眼は憲法改正とロシアとの北方領土交渉とされる。

 臨時国会中の改憲論議は、首相最側近の「職場放棄」発言などがあり、一向に進まなかった。連立を組む公明党の慎重姿勢もあり、参院選後に先送りされるとの見方が専らだ。

 そうなると、参院選が最大の関門になる。国会軽視や官僚組織の劣化など「1強」の不寛容な姿勢を国民がどう評価するか、是非が問われることになる。

 北方領土交渉も前途多難だ。プーチン大統領の寛容さに期待しているのだろうが、サハリン州では住民の反対集会が開かれるなど簡単には応じられないはずだ。首相は2島先行での交渉を進める構えとされるが、国民理解もないままではレガシーにはならない。

 ■米中、欧にも影■

 首相は「リーマン・ショック級のことがない限り(消費税)増税する」と繰り返してきた。ここに来て世界の株式市場が不安定化している。震源地は米国だ。トランプ政権の混乱が市場心理を悪化させ、年末には大幅下落を招いた。

 米中貿易摩擦は3月1日まで休戦中だが、両国の協議で沈静化へ向かうのか、見通せない。根底には不寛容さの域を超えた、米国挙げての「中国たたき」がある。ペンス副大統領の10月の演説はのろしともいえる過激な言葉が並んだ。

 対する中国は、米国のハイテク技術なくしては発展が見込めず、世界トップレベルの産業国家を目指すとした国家発展戦略「中国製造2025」の修正に踏み込む方針を固めたという。不寛容さの象徴といえるトランプ氏が成果欲しさに取引(ディール)に応じるか否かが焦点になりそうだ。

 欧州では英国が欧州連合(EU)からの「協定なき離脱」に陥る事態が現実味を帯び、世界経済を揺るがしかねない。ドイツの政治的混乱、イタリアの財政悪化、さらにはフランスの政情不安も欧州経済に影を落とす。

 世界経済が大きく減速すれば、日本経済の悪化も免れない。そうした事態に備えるべきだが、金融緩和一辺倒の日銀には対応の余地は乏しい。日銀頼みの政府も無策に等しい。

 ■23年開業へ着々■

 国体・障スポを終え、一段落の県内。ただ、23年春の北陸新幹線金沢―敦賀開業を控え、駅周辺のまちづくりは待ったなしの状況にある。並行在来線をどうするのか、特急の存続を含め対応を急ぐ必要がある。敦賀―新大阪の早期着工も欠かせない。

 そうした課題の解決に向け旗振り役となるべきは知事だ。しかし、今春の知事選に向け混乱が続いている。不寛容の連鎖は決して県民益にはならないことを肝に銘じる必要がある。

 同じ考えや意見を持つ者同士で安住し、ひとたび異論を唱える「敵」が現れると徹底排撃する。インターネットや会員制交流サイト(SNS)が分断を生み、分断をあおる、そんな風潮に拍車を掛けている。トランプ氏のツイッターがその最たるものだ。

 人類の未来を思えば、立ち止まって、さまざまな声に耳を傾けることが大切だろう。人工知能(AI)やITの時代だからこそ、人間らしい多様性への寛容さが求められている。

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