ビニールの開閉や水やりを自動化した農業用ハウス。福井県内でAIやIoT技術の実用化が進んでいる=福井県永平寺町けやき台のグラスITフィールズ

 急速に進歩する人工知能(AI)の技術が注目を集め、福井県内でも活用の動きが芽生えている。企業は商品開発や顧客サービス、工程管理で導入に乗り出し、大学でもロボットの研究が進む。県は昨秋開設した「ふくいAIビジネス・オープンラボ」で実用化支援を加速する構えだ。AI技術は、人口減少や少子高齢化が深刻な地方の課題解決にこそメリットが大きいとされ、関係者の期待は膨らむ。AIとともに持続可能な地域を目指す新たな時代が幕を開ける。

 室温低下が感知され、モーター音が静かに鳴った。農業用ハウスのビニールが、ゆっくり閉じていく。ITシステム構築のグラスITフィールズ(福井県永平寺町)が開発した自動管理システムは、スマートフォンで入力した土壌水分や二酸化炭素量の設定値に応じ、水やり機やヒーターも自動で作動する。

 AIに生育データを学習させれば、出荷時期を狙った温度調整が可能になり、安定供給につながる。自動化で生まれた余力を6次産業化などに振り向けられる。山本道明社長(52)は力を込める。「このままでは農家が激減して日本は衰退する。そんな未来を子や孫に負わせられない」

 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2040年の福井県の人口は、現在の約78万人から64万7千人に減る。高齢化率は37・2%まで上昇。生産年齢人口(15~64歳)は33万人と全体のほぼ半数に落ち込む。「人手不足の中で企業が生み出す価値をどう保てるか」と話すのは、「ふくいAIラボ」担当職員の大西順さん(35)。産業や暮らしを維持するには、AIによる効率化や省力化が欠かせないとみる。

 県内中小企業の多くは、将来のAI活用を見据え、必要な情報をデータ化するモノのインターネット(IoT)導入を模索している。坂井市の県産業情報センター内の「ふくいAIラボ」は、最新機器や活用例を紹介。勉強会に多くの経営者や若手社員が訪れ、技術相談の要望が相次ぐ。

 同ラボ開設に協力したサイバー大学(福岡県福岡市)の伊本貴士客員講師は「AIは、特に地方のさまざまな課題を解決する技術として期待されている」と指摘。石川や岐阜など他県も次々と導入支援の拠点を開設しており、「自治体が成果を競い合う状況にある。県全体で次世代技術を推進し、新たな産業をつくりだしてほしい」と呼び掛けた。

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