【論説】自らの主張ばかり言い募る。異なる意見を持つ相手に、ひたすら「ノー」を突き付ける。2018年はこんな場面を数多く見せられた。「米国第一」を世界に押しつけるトランプ大統領だけではない。他者の声に耳を傾けない風潮は「安倍1強」政権によってもばらまかれた。国際的枠組み、少数意見の尊重といった、人々が対話によって築いてきた秩序は崩壊の危機にある。対話を取り戻す必要を痛感した1年である。

 ■一方的振る舞い■

 米韓が1月、自由貿易協定(FTA)再交渉の初会合を開いた。米国が協定破棄をちらつかせ、渋る韓国をテーブルに着かせた。

 米政権の内幕を暴いたボブ・ウッドワード氏の「恐怖の男」によれば、この時期、米政権内では激論があった。韓国との貿易不均衡に不満を持つトランプ氏が破棄を強硬に主張。一部の政権幹部は、協定破棄となれば両国関係が傷つき、北朝鮮のミサイル発射探知など安全保障上極めて重要な情報が得られなくなることを恐れた。「貿易は安全保障の中核」としてトランプ氏説得の先頭に立ったのがマティス国防長官だった。

 結果的に韓国が譲歩した上で協定は継続されたが、米韓関係そのものの瓦解(がかい)につながりかねない、ぎりぎりの攻防が米政権内にあったことになる。マティス氏はその後、シリア問題でトランプ氏と決定的に対立、年末に辞任が発表された。

 相手が同盟国であろうと主張を高圧的にぶつけ、力を背景に一方的妥協を迫る。米政権の振る舞いはイラン核合意離脱、ロシアとの中距離核戦力(INF)廃棄条約破棄方針、北米自由貿易協定(NAFTA)見直しなど多くに共通する。

 一方で、北朝鮮問題は米朝首脳会談こそ実現したが非核化に進展がない。ほかにも、米中の貿易戦争は出口が見えず、欧州も英の欧州連合(EU)離脱問題を抱える。世界混乱への不安は年末、同時株安という形で噴出した。

 ■果たされない約束■

 国内では安倍政権の強引な性格があらわだった。働き方改革、カジノ法、入管法など重要法案を生煮えで押し通し、国会での数々の問題点の指摘は「政・省令などで後に対応する」と逃げた。森友・加計問題では安倍晋三首相自身が何度も「丁寧に説明する」と言ったが、一向に果たされなかった。こうした政治状況の中で、官僚が文書を改ざんしたり、書き替えたりした事案が相次いで発覚した。

 米軍普天間飛行場を名護市辺野古に移設し新基地を建設する計画で、政府は12月中旬に土砂投入を始めた。投入方針は玉城デニー沖縄県知事が、首相に中止を申し入れたその日のうちに明らかになった。まさに問答無用の暴挙だったと言わざるを得ない。

 気候変動の影響が顕著となった今年は豪雪、猛暑、豪雨、台風頻発など、これまで経験のない災害に次々見舞われた。新しい防災のシステムづくりが急務だ。官民の間に信頼関係が足りていなければ成し遂げられない課題であることを、首相は肝に銘じるべきだ。

 ■「融合」の価値■

 12月、福井県会最大会派だった県会自民党が分裂に至った。来春の知事選を巡り、現職の西川一誠氏支持か、前副知事の杉本達治氏を推すかで対立を続けた結果だ。知事選は自民党県連の執行部選びにも影を落とし、亀裂は深まる一方である。両氏の政策に明確な対立軸がない、とされる中で、これほど県連が混乱しているのは、県民には分かりにくい。対話が不足する社会の弊害がここにも見て取れる。

 救いは、福井しあわせ元気国体・同大会(障スポ)を成功させた、県民の底力だ。「融合」の理念の下、たくさんの人々が選手に励ましと声援を送り、スポーツボランティアとして両大会を支えた。期間中、どれだけの笑顔とあいさつが交わされたか分からない。

 対話し、絆を深めたことは、確実に福井の財産となった。対話を喪失している社会の中で、限りない価値である。新しい年への希望としてつなげていきたい。

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