【越山若水】近ごろ国難という言葉は連発されて値を下げている感じがある。だが、もしも南海トラフ巨大地震が起きてしまえばどうか。日本はまさに国難にたたき込まれる▼想定される犠牲者は最大30万人超。この1年に頻発した災害のすべてどころか、過去の複数の大地震被害を合わせたよりもはるかに上回る規模となってしまう▼中央防災会議が「半割れ」という耳慣れない表現を使い避難の新しい方針をまとめた。おさらいすると、半割れは南海トラフの東西に長い震源域のどちらか半分で大地震が起きるケース▼このとき、被害が出ていない残り半分の沿岸住民にも1週間程度の避難を呼び掛ける。マグニチュード(M)8以上の地震の後、残り半分で1週間内にM8級が起きたのは過去103事例で7回ある▼少ないように見えても、これは通常の100倍程度の確率らしい。過去にあてはめれば96回は空振り、という理屈になるが避難はやむを得ないだろう▼問題は1都13県の139市町村に及ぶ対象の広さだ。国を挙げた計画づくりが必要になる。それには北陸もきっと関係してくる▼映画「シン・ゴジラ」で、360万人の避難を決めた総理代理が「避難とは生活を根こそぎ捨てさせることだ」とうめく場面があった。南海トラフの避難者数はこの何倍にもなる。現実の政権は対応にどんな覚悟を持っているだろうか。

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