【論説】第2次安倍内閣発足から26日で6年がたった。昨年「5年」を取り上げる中で「1強」のおごりや緩み、米国追従などに触れたが、この1年、そうした姿勢が弊害となって噴き出した印象が否めない。最たるものは森友学園への国有地売却を巡る財務省の決裁文書改ざんだろう。

 官僚統治を加速させ、自民党をも追認組織にしてしまう手法で、働き方改革法やカジノ法、改正入管難民法など穴だらけの法案を強引に成立させた。「謙虚に、丁寧に」はみじんもない。「7年目も国家国民のため緊張感を持って頑張りたい」という首相。野党の疑惑追及がしぼんできたことを受けてか、表情は緩みっぱなしだった。

 ■前代未聞の文書改ざん■

 旧聞に属する感があるが、前代未聞の改ざんが発覚したのは今年3月のこと。昨年2月、森友学園に国有地が8割以上も値引きされ売却されていたことが発覚したのが発端だ。開校予定の小学校の名誉校長に安倍晋三首相夫人の昭恵氏が就任していたことから、夫人の関与や財務省の「忖度(そんたく)」があったのではないかとの疑惑が浮上した。

 国会で野党が厳しく追及する中、計14もの決裁文書から昭恵氏らの名前が消されるなど改ざんが明るみに出た。改ざんに反発した近畿財務局職員が自殺する悲劇も招いた。

 「私や妻が関わっていたなら、総理大臣も国会議員も辞める」とした首相答弁が引き金とされるが、財務省の内部調査でも動機などは解明されず、麻生太郎財務相は「それが分かりゃ苦労はせん」などとうそぶくばかり。真相はいまだ闇の中だ。

 ■都合の良いデータ提出■

 国会を1年余りも欺いた罪は重く、大島理森衆院議長が「民主主義の根幹を揺るがす問題だ。立法府の判断を誤らせる恐れがある」と指摘したのも当然と言えよう。

 背景には官邸による省庁幹部の人事権掌握がある。2014年5月に内閣人事局が発足。生殺与奪の権を握られた官僚は首相や官邸に忖度を働かせるような構造が出来上がった。首相の友人が理事長を務める加計学園を巡る獣医学部新設問題で、官僚が優遇したとされる疑惑も根っこは同じ。この疑惑も解明はストップしたままだ。

 官僚が首相や官邸の顔色ばかりをうかがい、国民を直視しない構図は政権のご都合主義を助長させるだけだ。働き方改革では裁量労働制を巡って、項目の異なる数字をひとくくりにし、裁量労働制の方が残業時間は短いなどと説明。データのずさんさが追及されると、首相は裁量制を法案から切り離さざるを得なくなった。

 ■「首相が障害」の指摘も■

 外国人労働者の拡大に向けた改正入管難民法でも、失踪した外国人技能実習生の聞き取りで、法務省が項目にない「より高い賃金を求めて」を主な理由に挙げたのも忖度が疑われる。法施行を急ぐ理由を聞かれた担当者が「首相、官房長官からの指示」と思わず漏らした本音が全てを語っている。

 この6年、目に見えて変わってきたのが政官の在り方だろう。官僚の倫理的な劣化が著しい。改ざん問題で「最強官庁」と称される財務省も弱体化したようだ。19年度予算案は過去最大の101兆円余に上る。ブレーキ役の不在は明らかだ。

 首相は最近、周囲に「来年以降は好きなことをやりたい」と吐露したという。北方領土問題や憲法改正を見据えているとされる。政策研究大学院大の飯尾潤教授は「前のめりな首相が障害だ」と指摘する。年越しに際し自らの来し方に目を向けてもらう必要がある。

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