【越山若水】「閑吟集」は室町時代に流行した歌謡や小歌を収めている。前書きによれば、1人の世捨て人が富士山を眺める草庵(そうあん)で慰みとした、忘れ難い歌を書き置いたという▼その中から1首紹介する。「世間(よのなか)はちろりに過ぐる ちろり ちろり」。世の中はあっという間に過ぎていく。ちらっ、ちらっとまさに瞬く間の出来事である▼人の世の無常感や気ぜわしい日々の暮らしを想像させる。ちょうど年の瀬のこの時期、残り少ない2018年を思って「その通り」と、膝を打った人も多いだろう▼今年の県内重大ニュースは、きのうの本紙でお伝えしているが、何と言っても衝撃的だったのは2月の大雪。福井市の最深積雪は147センチを記録し、1981年「56豪雪」以来37年ぶりの災難だった▼国道8号では約1500台の車両が立ち往生。JR北陸本線や北陸自動車道、さらに一般道も含め、雪に対する交通網のひ弱さを露呈し、県民生活や経済活動が大混乱した▼その後、夏には生命の危険も伴う猛暑や大雨洪水警報、秋には台風21号による暴風雨に見舞われた。まさに今年の漢字「災」がふさわしい1年だった▼振り返れば確かに「ちろりに過ぐる」の印象は強い。閑吟集に「恨みは数々多けれども よしよし申すまじ」と、不満を言うまいと達観した歌もある。とはいえ年末年始の雪マーク。ほどほどにと願うばかりだ。

関連記事