【論説】新制度で受け入れる外国人労働者が大都市に集中しないよう必要な措置を講じることに努める、としながら具体的な方策は見当たらない。政府が閣議決定した基本方針や支援策には肝心な部分が欠けている。これでは、自治体や受け入れを希望する企業は戸惑うばかりだ。

 来年4月施行という官邸主導の性急な方針に、省庁が詰め切れていないのが実情ではないか。14業種での受け入れや5年で最大34万5千人の見込み数などは、山下貴司法相が国会で「精査中」としていた内容そのままであり、その後練り上げたものとは言い難い。

 来年1月23日の衆院法務委員会の閉会中審査で制度の全容を説明するとしているが、より具体的な策を示せるのか。施行直前に提示するのでは国会や国民を軽視するものだ。施行後の混乱は避けられないだろう。

 大都市集中に関し、新制度は同業種ならば転職も可能としていることから地方で懸念が強まっている。日本人と同等以上の報酬を支払うと規定。その目安となる最低賃金は大都市圏で高く、人材が流れることは容易に想定される。政府は3カ月に1度、業種や都道府県別の受け入れ数を公表するとしているが、偏在が判明した場合にどう対応するのかを明らかにすべきだ。

 もちろん、地方の企業などが都市部に劣らない待遇を準備する必要はあるだろうが、日本人の労働者や若者が地方から都市へと流れる現状を見ても、そう簡単ではない。賃金格差をどう埋めるのか、より良い条件を求めて転職する自由をどう制限するのか―など政府は対応策を示すべきだ。地方の魅力を引き出したり、高めたりする方策も求められる。

 「政府全体で共生社会の実現を目指す」とした総合的対応策では、全国100カ所に生活相談に応じる一元的窓口を設置するのをはじめ、医療や防災など各種行政サービスの多言語化、日本語教育の充実など126の施策を列挙している。ただ各省庁の政策の寄せ集めといった感が否めず、さらなる精査が必要だろう。

 例えば相談窓口は、自治体が名乗りを上げれば認められるのか、多言語化に向けた人材をどう確保するのか、日本語教育の仕組みをどうするのかといった自治体側の懸念はここでも払拭(ふっしょく)されない。

 各自治体に策定が求められている「多文化共生推進プラン」にも支援策などが盛り込まれているが、策定率は都道府県や政令市などを除く市では67%、町26%、村13%。県内では福井市が策定済み、越前市は策定段階にある。施策がどこまで浸透するかは心もとない状況にある。

 約5割が新制度に移行するとみられる技能実習生の問題も見逃せない。違法労働や人権侵害などから、失踪者は12年からの6年半で3万2千人余りに達し、死者は10年からの8年間で174人に上っている。実習生制度の検証と改善がなされないままの新制度導入は禍根を残すことになる。

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