地方の長男がUターン就職する理由

 福井県を含む「地方の長男」をテーマにおしゃべりを楽しむ「第2回福井新聞オンライン×ゆるパブコラム・オフ会」(9月10日、福井県鯖江市)で話題の一つに挙がったのは、長男が地元で就職する心理。というのも、参加者の意見を基にしたステレオタイプな“優等生”の長男が進む道は「進学校に入学→県外の国公立大学進学→福井で公務員または地元一流企業に就職」というもの。なぜ県外にとどまらず、地元就職を選ぶ長男が少なくないのか。長男の胸の内について思いを巡らせた。

 長男が地元に落ち着く理由として挙げられたのは、やはり長男としての自覚。坂井市の30代女性は長男の夫について「東京の大学に進学して都内の企業に就職したのに、今は地元にUターンして公務員をしている。本人は否定するけど、親に東京で好き勝手させてもらった恩返しで帰ったんだろうと思う」と心中を察した。

 藤島高校を卒業し県外の国公立大学に進学、大企業を勤め上げ福井に戻った60代男性(長男)は「やっぱり親が心配だった。口では帰ってこなくていいと言うけどうそ。働いていた40年余、ずっと県外に出た負い目があった」と打ち明けた。

 ただ、長男にとって福井は居心地がいいのではという意見もあった。越前市の30代男性(次男)は「長男は兄弟間で親から優遇されるから、ほっといても地元ではよいポジションを保証されている。都会で殺伐とした競争にさらされるよりも、そこに戻りたい自分がいるのかなと思う」と推測。コーディネーターの若新雄純さん(長男)も「責任感で帰るというよりは、帰りたい気持ちの奥底に、地元では『長男としてのポジション』を保てる心地よさがあるのではないか。しかも、地元の優良企業や公務員など安定した職業に就けたなら、なおさら」と続けた。「そういう人間ばっかりがいる福井だから、そんなに変革がない、保守王国といわれる」(60代の長男)との手厳しい意見も合った。

 反対に、県外で就職した長男の意見も聞きたいところだが、参加者の中に県外で働く長男は少なかったため残念ながら意見はなかった。ただ、県外就職した若新さんの同郷の友人は「すっごい人付き合いが嫌い。村の付き合いや部活もすっごい嫌がり、しがらみは面倒くさいと思う人だった」という。

 オフ会ではいろんな意見が出たが、実際に長男の置かれた境遇は人それぞれ。家庭環境などに応じて「長男」の役割も異なるだろうし、長男であることの受け止め方も変わるだろう。ただ、今回の長男談義は長男である記者にとっても胸に強く響いた。

 ⇒【第1回】「地方の長男、託された“十字架”」を読む

 ⇒【第2回】「地方の長男『おもちゃは弟の10倍』」を読む

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 福井県を含む「地方の長男」をテーマにおしゃべりを楽しむ「第2回福井新聞オンライン×ゆるパブコラム・オフ会」が9月、福井県鯖江市の市環境教育支援センター(エコネットさばえ)で開かれた。ネット公募で集まった約20人が参加。「当事者」である長男、長男の妻、弟・姉妹もおり、さまざまな立場から「長男」を考察。話し合いから、生まれながらにして先祖代々の家や土地、墓を継ぐという“十字架”を背負わされながらも、その分、他の子より親に優遇されるという長短ない交ぜの境遇が浮き彫りになった。オフ会で語られた内容を3回にわたって紹介する。
 

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