【論説】建設中の越前市新庁舎前に整備する「ひろば」がどんな姿になるのか。市民が集うイベント会場、防災機能を備えた避難場所、加えて、まちの歴史を伝える場としても使われる。

 整備の方向性や利用方法を話し合う検討会議で、市民が誇りを持てる場所にしたいと声も出ている。議論の行方を注視したい。

 新庁舎は現庁舎の北側敷地に建設し、現庁舎を取り壊した跡地を2020年度にひろばとして整備する。約4千平方メートルあり、本庁舎の建設基本方針には「交流とにぎわい空間を生み出すスペース」とある。

 新庁舎正面の大屋根エリア(約600平方メートル)と一体的な利用もできる。南側のシンボルロードまでを連続した空間と考え、屋上庭園を備える本庁舎と合わせて市中心部のランドスケープとする構図を描く。

 景観デザインや文化財保護の専門家、地元代表らでつくる利用検討会議で、焦点になっているのが建設地から出土した石垣や礎石群の活用だ。14年度の試掘から17年度までの調査で、江戸初期~中期と推定される地層で見つかった。

 石で囲まれた池状遺構から、府中藩主本多家の御館の可能性が高いとする専門家の指摘もあり、史跡や観光資源として現場保存を求める市民の声が高まったのは理解できる。

 ただ庁舎着工まで時間的余裕がなく、石垣などは一度掘り出し保管。ひろばに移しての活用策を探ることになった。文化財保護には「現状保存」「原状復帰」の原則があるが、今回は市民の要望を受け止めた現実的な次善策とみたい。

 検討会議では福井城の石垣を再現した福井市の中央公園などを例に、ひろばで「見せる」活用が大切との認識で一致した。「石垣の存在感は強い。再現することが最大の財産になる」との意見もあった。

 計画には、噴水広場や駐輪場、イベント開催のための電気・給水設備、防災広場としてテントスペースやマンホールトイレなどが描かれている。石垣などの再現を考える上で、インフラ設備の使い勝手との折り合いが課題となろう。比較的軟らかい石材もあり保存と展示には工夫も必要だ。

 県は福井城址の石垣を適切に保存するため、工事や修復履歴の電子カルテ化を進めている。将来の補修に備え、できる限り現状の石材を活用するためで、歴史的な遺産を大切に扱いたいという考えからだろう。

 本多家が入る以前の越前府中城は城跡や堀が現存しない。江戸期の絵図などを基にひろばに反映させるのも困難という。であればこそ“都市の記憶”をとどめる史料は貴重だ。

 JR武生駅から庁舎前を通るシンボルロードは中央分離帯を撤去し、総社大神宮や蔵の辻へと人の流れをつくる。ひろばを起点ににぎわいを広げる仕掛けも官民で知恵を絞りたい。

関連記事