AIを活用した報道機関向けサービスを展開するスペクティの代表取締役CEO村上建治郎氏=12月、東京都新宿区のスペクティ

 AI(人工知能)が社会に浸透する中、SNS上の投稿をAI解析し報道機関に情報提供する速報サービスが登場、テレビ局や新聞社での導入が進んでいる。サービスを展開する株式会社スペクティの代表取締役CEO村上建治郎氏は、報道現場がAIを活用することで、メディアの在り方がどのように変わっていくと見据えるのか。またどのようなメディアが次代を生き残るのか。考えを聞いた。

 ▽知的分野が置き換わる

 新聞を購読しない、テレビも見ない人が増えている。皆がスマートフォンで情報を得る時代を迎え、新聞社やテレビ局のような既存メディアは、従来の収益構造に頼っていては体力的にもたなくなってきた。

 メディア以外の業種で考えると、例えば自動車はかつて製造工程そのものに人が従事したが、今はオートメーション化が進み人は最終チェックをするだけだ。あらゆる業界が新技術を取り入れコストダウンを図る中、メディアはなかなか新しい技術を取り入れられなかったように思う。知的産業で人件費がかかるのだが「足で稼ぐ取材」というやり方が、簡単に他の手法に置き換えられないからだ。

 しかしAIの登場で、いよいよ知的な分野(メディア)も“機械”に置き換わる時代が到来した。メディアは情報分析に長けているAIをある程度頼り、人がやらなくてもよい仕事をどんどん任せればよいだろう。時間コストが下がれば、人間(記者)は「人に会って取材する」という大事な業務に時間を割くことができ、結果として良質なコンテンツを生み出すことができる。

 ▽「読ませる記事」重要

 ニュースアプリを眺めれば、既存メディアの記事もネットメディアの記事も「並列」に読まれている。既存メディアはファクトチェックに重きを置いているが、ネットメディアの記事の中には「とりあえず書いた」ような内容もある。良質なコンテンツとそうでないものが交ざっている状況だ。各社競合の中でページビュー(PV)至上主義に陥って「フェイクでも面白ければいい」となっては好ましくない。

 そこでプラットフォーム事業者の中には、掲出するニュースの選定において「PV」という評価軸でなく、記事の質を見極めようとする動きも登場している。この流れで生き残るのは、しっかりと取材された「読ませる記事」を書けるメディアだろう。既存メディアであろうと、新興ネットメディアであろうと同じだ。

 ■むらかみ・けんじろう 1974年東京都出身。ネバダ大学理学部物理学科卒。早稲田大学大学院商学研究科修了。 ソニー子会社、シスコシステムズなどを経て2011年起業。

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