【越山若水】「机上なる冬至うす日に手を伸ぶる 皆吉爽雨」。きょうは二十四節気の「冬至」。これを学術的に説明すれば、太陽が南回帰線の真上から地球を照らす日である▼だからわれわれが住む北半球では太陽が最も遠ざかり、昼間の時間が一番短くなる。しかしこの日を境にまた日が長くなることから「一陽来復」とも称される▼その言葉は中国古典、五経の一つで占いの書「易経」が由来である。冬至には陰が極まり再び陽がやって来ることから、不遇が続いた後は幸運に向かうことを指す▼同じ意味合いの有名な慣用語がある。「冬来(きた)りなば春遠からじ」。漢文調なので日本生まれの言い回しと思われるが、実を言うと、英国の詩人シェリーの長詩「西風に寄せる歌」が出典となっている▼見事な日本語に訳したのは「海潮音」で知られる上田敏だと巷間(こうかん)いわれるが、全訳詩集にも掲載されていない。シェリー詩集を訳した上田和夫と混同されたという説もある▼言葉のうんちくはさておき、冬至を「新しい太陽の誕生日」と考える習慣は洋の東西を問わない。世界の祝祭クリスマスも冬至祭の流れをくむらしい▼ただ「冬至冬中(ふゆなか)冬はじめ」と呼ぶように、現実には寒さの本番はこれから。だからこそ厳しい時候に温暖な季節の到来を思い描く。「一陽来復」「冬来りなば…」という未来志向。先人の生活の知恵に感心する。

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