「mammamia」の拡大。一つ一つ手で結んで成形したミルキーの包み紙は、しわの質感にもこだわっている

 両親が商売を営む実家の2階で、身の回りの日用品を擬人化して一人遊びしていた幼少期。モノに感情移入する感覚は、大人になっても消えなかった。福井県鯖江市出身の現代造形作家土田泰子さん(33)=兵庫県神戸市=の新作は、結婚前後に胸に去来した母の愛情の偉大さを、「ママの味」の象徴であるミルキーの包み紙を素材に表現した立体造形作品。日常生活の中で強く抱いた感情を掘り下げ、自分の意思とモノが持つ使命とをリンクさせるように形に落とし込む。その優美なコンセプチュアルアートは、海外で高く評価されている。

【画像】立体造形作品「mammamia」

 神奈川県の平塚市美術館で開催中の個展で発表している「mammamia」。母の包み込むような愛情を、高さ101センチの抽象的な立体で表現した。不二家から提供を受けたロール紙状の包み紙を一枚一枚ちぎり、金網状のベースに結わえ付けている。使った包み紙はミルキー22万5千個分。不眠不休で制作した2カ月間は作品に入り込むあまり味覚が変わり、ミルキーしか口にできなかったという。「作家は作品の母。手元を離れるまで、母として無償の愛をささげた」と語る姿は求道者のようだ。

 ジュエリーデザイナーを志し、丸岡高から名古屋芸大デザイン学部に進学。鍛金や鋳造技術を学んだ。しかし作品を作るにつれ「私が表現するものに対して譲れないものはコンセプト。技法は手段に過ぎない」と思い至り、素材もサイズもボーダーレスになっていった。

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