【論説】公判が1週間にほぼ4回のペースで開かれ、審理に207日もかかったと聞けば大抵の人が尻込みをするに違いない。これが最も長引いた裁判の事例だとしても、である。

 裁判員裁判が導入から10年目を迎え、審理の長期化が目立っている。裁判員には有罪か無罪か、死刑か無期懲役かという重い判断に携わる心理的な重圧がかかる。それに加え、長い裁判が日常生活の支障になりかねないとすれば、裁判員のなり手が減っていくのは自然の成り行きである。審理の迅速・短縮化が大きな課題だろう。

 ■審理に207日■

 神戸地裁姫路支部で11月8日、元暴力団組員の男性ら3人の死亡に関与したとして被告に無期懲役の判決が言い渡された。この殺人・監禁致死事件の裁判にかかった日数は207日と、過去最長となった。

 これまでの最長は2016年11月に名古屋地裁で判決があった九頭竜湖女性殺害事件の160日。大幅な長期化である。

 判断が難しかったのは容易に推察できる。被告は知人らと共謀し、10~11年に元組員の男性と広告会社役員の男性を殺害したほか、無職男性を監禁して死亡させたとして殺人と逮捕監禁致死の罪に問われていた。

 ところが、元組員以外の2人の遺体は見つからず、直接的な物証も乏しかった。被告側は起訴内容の大半を否認し、検察側と弁護側の主張が真っ向からぶつかり合ったという。審理が長引いたのも当然かもしれない。

 ■初公判後も半数辞退■

 判決は、といえば会社役員の殺害について無罪とした。遺体や血痕などがなく「殺害行為に及ぶ前に死亡した可能性も否定できない」からだ。一方、元組員の殺害と無職男性の監禁致死を認定し、無期懲役の結論を出した。その後に被告、検察の双方が判決を不服として大阪高裁に控訴したのを見ても、裁判員たちが困難な判断を強いられたのが分かる。

 結局、公判は計70回開かれた。これも過去最多で、証人は80人に上った。審理予定が明らかにされてからの裁判員選任手続きでは、呼び出し状を送付された候補者501人のうち420人が辞退。4月の初公判後も、裁判員6人のうち3人が辞退を申し出て補充された。

 これを極端な事例だと片付けるわけにはいかないだろう。09年5月に導入された裁判員裁判は、全体としても審理が長引く傾向がみられるからだ。

 ■趣旨損なう可能性■

 最高裁が公表している実施状況によると、初公判から判決までの期間は09年の3・7日から年々長期化している。昨年は10・6日で3倍近く長くなり、今年は9月末時点で10・5日(速報値)となっている。

 これに比例するように、裁判員の候補者に選ばれながら辞退した人の割合である辞退率も上昇している。09年は53・1%だったが、今年9月時点では67%にも達し、裁判員離れを懸念する声が広がりつつある。

 裁判員制度は市民の多様な考え方を反映させる趣旨。実際、裁判員を経験した人の満足度は極めて高いとのアンケート結果もある。だが、裁判員を務めようにも長時間かかるのでは、仕事や家事の都合で困難だと考える現役世代が多いのも現実だろう。このままでは裁判員の年齢や職業経験といった構成に偏りが生じ、制度の趣旨が生かせなくなる可能性もある。

 裁判員法には、審理が著しく長くなりそうなときは裁判官のみで審理できるとする除外規定がある。また、被告が複数の事件で起訴された場合、事件ごとに裁判員を入れ替える区分審理を活用する方法もあるようだ。どうすれば審理の充実と短縮化の両立が図れるか。幅広く知恵を集めつつ、柔軟な対応を願いたい。

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