完成した竹製鍵盤のピアノを演奏する升崎直美さん(左)と笠島豊さん=福井県鯖江市の「鯖江工芸」

 竹の特性をピアノに応用しようと、福井県鯖江市の眼鏡職人が竹製鍵盤のピアノを開発した。眼鏡枠加工の技術力を生かし、吸水性やさらさらとした肌触りなど竹が持つ高い機能性を生かした鍵盤が実現。製作を依頼したピアニストからは「高級ピアノのよう」と好評を得ている。

 製作したのは眼鏡枠製造会社「鯖江工芸」(同市)の笠島豊社長(69)。20年以上前から国内で唯一、竹製の眼鏡フレームを企画製造している。天然素材のため肌に優しく、軽くて耐久性に優れ、鼻パッド部分は汗をかいても滑りにくいといった特長がある。

 ピアノを弾かない笠島さんが竹製の鍵盤を作ることになったのは今年春、市内を訪れたプロピアニストの升崎直美さん(44)=石川県=が同社の「竹めがね」を購入したことがきっかけ。竹の特性について説明を受けた際、升崎さんは「鍵盤にぴったり」と思ったという。

 升崎さんによるとピアノは一級品だと象牙の鍵盤だが、一般的なものはアクリル製。アクリルは吸水性がないため、演奏中に手汗で指が滑ったり、鍵盤がべたついてしまったりする。

 竹めがねが気に入った升崎さんはすぐさま竹製鍵盤の製作を依頼し、自宅にあるアップライトピアノを同社に送った。製作は木製の鍵盤本体に貼られたアクリルを剥がし、竹を貼り合わせていく作業となる。自分の技術が生かせるならと快く引き受けた笠島さんは、京都のモウソウ竹をレーザーで鍵盤の形に加工していった。

 作業を進めると、鍵盤全88個が微妙に異なる形状をしていることが判明。このピアノは長年使用されていたため、鍵盤本体に反りや変形があったからだという。数ミリの違いを手作業で調整していった。

 象牙鍵盤のようなタッチ感を追求するため、表面の磨きにもこだわった。升崎さんも、何度も同社に通いながら手触りを確認し、約半年かけて完成。笠島さんは「最初はどうなるかと思ったが、依頼主も満足してくれてよかった」と白い歯を見せる。

 笠島さんや升崎さんによると世界初の開発事例とみられ、特許を出願するなど商品化の準備を進めている。升崎さんは「眼鏡の時も感動したが、改めてすごい技術だと思った。竹めがねのように世界から依頼がくるのでは」と話している。

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