【越山若水】師走に入り、忘年会シーズンたけなわである。ちなみに「たけなわ」は漢字で「酣」と書くように、酒の発酵が進んで次第に甘くおいしくなってきた状態をいう▼そこで「物事の盛り」「真っ最中」の意味になるが、宴会などの酒席にはピッタリの言葉だ。ただ度が過ぎれば「酔態」「醜態」をさらす羽目になりかねない▼鎌倉末期の随筆家、兼好法師も「徒然草」で警鐘を鳴らしている。第百七十五段「世には心得ぬ事の多きなり」で酒飲みの悪いところを次から次へと列挙している▼何かといえば酒を勧め、逃げ出そうとする人まで捕まえてむやみに飲ませる。普段は奥ゆかしく思える人が、酒を飲み出すと分別がなくなる。烏帽子(えぼし)を横に曲げ、裾をだらしなくまくり上げたりする▼これでもかと悪態を並び立てる一方で、良い酒の例も挙げている。月の夜、雪の朝、桜の花の下、心ゆったりと語り合いながら飲む酒。思いがけなく訪ねて来た友と飲む酒▼随筆の第一段で「下戸ならぬこそ男(をのこ)はよけれ」と明記する法師は元来左党と思われる。その助言を肝に銘じ、酒とはうまく付き合うよう心がけたい▼さらに県民としては福井県提唱、宴席で食べ残しをなくす「おいしい食べきり」運動も実践したい。適量注文や食べきりタイムの設定など「宴会5箇条」を守れば、酒食も楽しく環境にも優しい忘年会になるはず。

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