1カ月ほど前、左胸に締めつけられるような鋭い痛みが走り、病院を受診しました。肺のX線、CT、MRI検査、心臓のCT、MRI、心電図の検査を受けましたがいずれも「異常なし」でした。ただ、痛みが続いたので、肩、腕、首のMRI検査も受けました。これも異常は見つかりませんでした。痛みはだいぶ和らぎつつありますが時々現れ、不安になります。他に受けるべき検査やアドバイスがあれば教えてください。(福井県福井市、50代男性)

【お答えします】木村哲也・福井大学医学部附属病院救急部長

■腹部の病気、神経痛などの可能性

 患者さんが「胸の締めつけられる痛み」を訴えて診察室を訪れられると、医師には少なからず緊張感が走ります。心・血管疾患や肺疾患など、命に関わる呼吸・循環器系の病気が想定されるからです。

 このため、胸痛を訴える患者さんに対しては、まず医師はそのような病気がないか念入りに診断を進めます。質問の方の場合も、心電図やCT・MRIなどの検査が行われており、そのような危険な病気の可能性がないかが慎重に調べられたようです。

 では、それ以外の胸痛の原因にはどのようなものが考えられるのでしょうか。

 一つには、心臓や肺以外の臓器に由来するものがあります。例えば、胃潰瘍や逆流性食道炎、胆石発作などのように、腹部臓器の病気でも胸や背中に痛みを感じることがあるので要注意です。これらは、食事に関連した痛みであることが多く、胃内視鏡や腹部エコーなどの検査により診断をつけます。

 また、肋間神経痛は、肋骨(ろっこつ)の下に沿って走る神経の痛みで、左右どちらかの側胸部に数秒走るズキンとした鋭い痛みで、深呼吸や体位の変化で誘発されることがあります。外傷や炎症などを契機として発症しますが、原因が明らかでない場合も多い疾患です。検査で診断することが難しく、痛みの性質や経過などの病歴や、他の病気の可能性を否定した後に最終的に診断がつけられます。

■ストレスなど精神的な要因も

 一方、こころの問題による「胸痛」もあります。例えば心臓神経症は、狭心症とよく似た症状ですが、詳しい検査をしても異常はなく、ストレスなど精神的な要因のよるものと考えられています。運動時に出現することはなく、チクチクとした指で示すことができるぐらい狭い範囲の痛みであることが多いのが特徴です。強い不安感を伴いますが、命に関わるものではありません。

 質問の方の場合は、以上のような心臓以外に由来する「胸痛」の原因を探る必要があるでしょう。特に、腹部臓器が原因の場合は、早めの治療が必要なこともあるので、念のため検査を受けることをお勧めします。

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