【越山若水】顔が写っていなくても、歩幅や姿勢などの分析で個人を特定していくと何かで読んだ記憶がある。警察による防犯カメラ画像の追跡術である▼東京・渋谷の軽トラック横転事件で、容疑者逮捕の決め手はカメラの画像。ならば警視庁の科学捜査組織SSBCが動いたと想像していいだろう▼SSBCは高度な技術陣を抱え、画像や電子機器の分析、ビッグデータ解析などハイテク捜査に携わる。あの人混みから1カ月で容疑者を割り出したとすれば実力は大したもの▼一方、対極といえる地道な捜査手法がある。捜査員がひたすら指名手配者の顔写真を記憶、雑踏の中で偶然出くわす機会を待つ「見当たり捜査」である。大阪府警が初めて導入して先月40年になった▼ベテランなら千人以上を覚えるらしい。同府警の摘発人数が4千人を超える実績もすごいが、誤認逮捕が1件もないことに驚く。間違えない、というところが捜査員の職人技だ▼科学捜査は人工知能(AI)活用の研究が加速する。犯罪予防に効果がありそうな半面、究極の監視社会を招く心配がある▼もし見当たり捜査員が機械だったら―。人違いでも機械の判断が優先されかねない怖さがないか。犯罪捜査はどこか血の通ったものであってほしい。ちなみにSSBCは捜査支援分析センターの頭文字。中身に似合わぬ単純さには人間臭さを感じるのだが。

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