コケが持ち去られ、地面がむき出しになった箇所が点在する平泉寺白山神社の境内=11月、福井県勝山市平泉寺町平泉寺

 福井県勝山市の平泉寺白山神社境内でコケが掘り起こされ、持ち去られる被害が相次いでいる。拝殿付近の最もコケが美しい場所に被害が集中し、観光名所が無残な姿となっている。昨年の白山開山1300年を機に観光客が急増しているさなかで、地元住民らは「許せない行為」「元の風景に戻るのだろうか」と憤っている。

 現場は拝殿に向かう参道の南側。コケがじゅうたんのように広がり、観光パンフレットにも頻繁に登場する白山平泉寺を代表する場所だ。

 9月ごろから地元の平泉寺区の住民が早朝、清掃に訪れると、コケが長さ15~20センチほどなくなり地面がむき出しになっている箇所が見られるようになった。現在では少なくとも10箇所ほどに広がっている。イノシシが掘り起こす被害は過去にもあったが「(イノシシによる被害のように)付近にめくれ上がったコケがなく、明らかに人為的に持ち去られている」(平泉寺区総代の大久保満さん)という。

 その後、不審人物が日中にコケをリュックに入れる現場を観光客が目撃し、持ち去り行為は決定的となった。

 区はパトロールを強化しているものの常時目を光らせるのは難しく、対応に苦慮している。防犯カメラは付近に電源がなく、景観上も設置は困難だという。

 平泉寺を訪れる観光客は2016年度までは年間9~12万人台で推移していたが、泰澄が白山を開き1300年の節目だった17年度は36万人に急増した。本年度も10月末までに18万4千人が訪れ、平日でも絶えない。住民の一人は「観光客が増えたのは歓迎だが、こんなことをする人間も呼び寄せてしまったのか」とショックを隠せない。

 ■「持って帰っても育たない」

 福井県立大学の大石善隆准教授(コケ生態学)は「コケは集団で密な群生をつくり水分を維持している。1カ所なくなると周囲も広く枯れることもある」と指摘。白山平泉寺の被害は回復するにしても場合によって数年以上かかるとみる。また白山平泉寺に広がるコケの多くはヒノキゴケであることから「生育には適度な湿り気が必須。人家では乾燥しすぎるため、持ち帰ってもまず育たない」と話している。

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