【越山若水】江戸時代に琉球や奄美大島を支配下に置いた薩摩藩は、サトウキビからできる高価な黒砂糖を独占的に販売した。利益は膨大で藩の巨額借金はすぐに完済された▼年貢対象外の余計糖さえ、島民に日用品を売りつけ回収。この「総買上制」は明治維新後も継続された。さすがに残酷だと、政府がやめるよう注意したという▼自由取引になったものの、今度は資本力のある民間商人が買い付けにやって来た。島民の気を引くため魅力的な品物を掛け売り、金を貸して砂糖売買を約束させた▼現金をほとんど持ったことがない島民は、目の前の利益に釣られて商人の言うなり。結局は高利の借金を抱え込み返すこともできない。砂糖はもちろん、財産までなくす者が後を絶たなかったそうだ▼民俗学者、宮本常一の「辺境を歩いた人々」(河出文庫)は辺地を探訪した4人の評伝記。その中で笹森義助は北は千島、南は琉球・台湾まで踏査し過酷な実情を記録した▼そこに描かれた搾取の構図は、中国が推進する経済圏構想「一帯一路」と瓜(うり)二つだ。開発援助の名目で債務を押しつけ、途上国を意のままに支配する▼G20首脳会合がブエノスアイレスで始まった。金に物を言わせる中国の「一帯一路」には批判の声が根強い。ただその先頭に立つ米国の保護貿易も身勝手さでは根っこが同じ。強欲と我欲の覇権争いの様相である。

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