【論説】これでは何のための増税かと言いたくなるし、大盤振る舞いの後の反動も気がかりだ。

 政府は2019年10月の消費税率10%への引き上げに伴う対策の骨格をまとめた。キャッシュレス決済時のポイント「5%還元」やプレミアム付き商品券の発行のほか、自動車や住宅関連の減税方針などを盛り込んだ。20年度予算でも手当てするとしている。

 今回の増税による直接の負担増は年5・6兆円。ただ、幼児教育の無償化や軽減税率などで実質2・2兆円とされる。経済対策は19年度予算に上積みする経費だけでも2兆円に上り、20年度予算でも措置するとなると実質負担額を大きく上回ることになる。

 消費税増税は歳入を増やすことで財政再建を進め、社会保障制度の安定化を図るはずのものだ。歳入以上に歳出が増える構図は異様ではないか。一定の支出はやむを得ないものの、実効性の観点から疑問符が付く支出も多い。12月上旬にも決めるという概要に際しては吟味が必要だ。

 キャッシュレス決済時のポイント還元を巡っては、安倍晋三首相の肝いりで突如、2%から5%に決まったという。実質減税とすることで、増税前の駆け込み需要増を抑える効果が期待できるとの見立てだ。

 ただ、決済時の9割を占めるクレジットカードに関しては、高齢者や低所得者にどこまで普及するか。現金決済の習慣しかない人たちにとっては酷な仕打ちになりかねない。キャッシュレス化にはマイナンバーの活用も掲げているが、二兎(にと)を追う危うさも否めない。

 対象を中小店舗に限定するとしている点も問題がある。中小の定義も曖昧なままで、還元を受けられる店と受けられない店があれば混乱を招くことは必至だ。体力のある大手が独自に還元することを見込んでいるとされるが、他人の財布をあてにするようなものだ。

 プレミアム商品券に関しては、商品券を使うことで「低所得者世帯と分かってしまう」とし、対象を0~2歳児の子供を持つ世帯に広げた格好だ。14年に消費税率を5%から8%に上げた際にも導入されたが、消費喚起効果を疑問視する専門家が少なくない。

 2度増税を延期した首相にとって、14年増税後の景気腰折れが相当なトラウマになっているのだろう。「政策を総動員する」の下、国土強靱(きょうじん)化の公共事業や商店街の活性化なども挙げたが、消費下支えの名の下に入れ込んだ印象も拭えない。幼児教育の無償化は、昨年秋の衆院選で首相が「国難」とした少子化対策であり、景気対策に掲げることには違和感もある。

 今回の政策が実行されれば、増税前後で需要の大きな変動を抑制する効果はあるだろう。だが、政策が終了した後の消費の落ち込みも大きくなる。とりわけポイント還元が開催前に打ち切られる20年東京五輪・パラリンピック後は、ただでさえ景気減退が危惧されている。追加支出に追い込まれる事態は言語道断だ。

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