【論説】外国人労働者の受け入れ拡大に向けた入管難民法改正案が衆院本会議で可決された。審議時間は20時間にも満たず、論議も深まらない中での採決強行である。肝心の制度設計に関して政府は「成立後に省令で定める」としている。これでは参院でも不毛の論議に終始することになる。政府、与党の「国会軽視」も度が過ぎると言わざるを得ない。

 衆院法務委員会や衆参予算委員会集中審議は、議論の堂々巡りの印象が拭えなかった。安倍晋三首相が当初「上限」と明言していた、5年で最大34万5千人などとした受け入れ数に関しても、26日の衆院予算委で「法律に基づいて策定する分野別運用方針で示す」とひっくり返した格好だ。

 そうした中で、野党が重視したのは、失踪した外国人技能実習生の聞き取り調査。違法労働や人権侵害が横行する実態が浮き彫りになった。政府は実習生の約5割が新制度の在留資格に移行すると見込んでいる。実習生制度を温存したままの移行に野党が反発するのは当然だろう。

 山下真司法相は省内のプロジェクトチームで対応するとしたが、昨年11月の技能実習適正化法の施行以降も失踪者が4千人余りに上っている現状がある。こうした違法が新制度でも繰り返される可能性は否定できない。山下氏は「制度は別物」と強調するが、密接不可分は明らかであり、実習生制度の廃止を含めた抜本的な見直しが必要だ。

 受け入れ数はもちろん、新在留資格の技能水準や受け入れ態勢、日本人の雇用への影響、医療や福祉などの社会保障といった課題が議論されるべきなのに、政府はその材料を全く示さない。経済情勢など確かに不確定な要素はあるが、来年4月の施行を目指す以上、「検討中」では済まされない。法案成立後に示すという姿勢では野党は無論、国民理解も得られない。

 省令に対する危うさも否めない。法務省は失踪実習生調査では「集計ミス」を理由にしたが、以前から実習生側に責任を押しつけるようなデータ解釈を繰り返しており、改ざんのそしりも免れない。財務省の決裁文書改ざんや防衛省・自衛隊の日報隠蔽(いんぺい)、働き方改革の不適切データ処理など相次ぐ不祥事に、官僚への不信を募らせる国民も少なくないはずだ。

 省令では、さまざまな課題を民間NPOや地方自治体などに丸投げする恐れもあるとの指摘がある。さらには新資格の主となる「特定技能1号」は同業種間での転職が可能で、好待遇を求めて大都市圏へ移り、地方には定着しないのではないかと危惧する声もある。

 野党議員からは今回の改正案に関して、世論を二分した安全保障関連法や「共謀罪」法などの審議に比べても「すかすか」「国会軽視も甚だしい」との声が上がる。国のあり方にも関わる法案だけに、政府は具体策を早急に示し熟議に付すべきだ。首相の外交日程に合わせるような対応では国会軽視どころか、国会無視というほかない。

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