【越山若水】病気にも「お国柄」があるらしい。人種や生活環境によって発症率に大きな違いが生じる。例えば、日本は皮膚がんが最も少ない国で、多発するオーストラリアの100分の1しかない▼逆に日本を含む東アジアは胃がんが極めて多く、発症率は北米の7倍にも達する。これはピロリ菌の種類が関係し、アジア型はがんを起こしやすいという▼こうした体質の違いは、日本人と欧米人だけでなくアフリカやヒスパニック、インド系などあらゆる人種に見られる。だから同じ病気でも治療の仕方は少しずつ異なる▼ここに着目したのが、移民が多く「多民族国家」の代表でもある米国だ。それぞれの民族に応じて有効な治療や薬品を提供する「人種差医療」と呼ばれる処方に取り組んでいる▼以上は「欧米人とはこんなに違った日本人の『体質』」(奥田昌子著)に教わった。ただ「人種差」という遺伝的な基準は不正確で、社会的に危険とする指摘も一部にある▼その懸念が現実となった。中米諸国から米国を目指す移民キャラバンに、トランプ米大統領は「ギャングや悪者が紛れ込んでいる」と敵意をむき出し▼メキシコ国境に兵隊を派遣し、越境を試みる移民には催涙ガスを使用し威嚇。国境封鎖も辞さない構えだ。これでは他民族に配慮する「人種差医療」とは全く別物。異民族を排除する「人種差政治」にすぎない。

関連記事