【越山若水】カレーライスを食べ天丼を平らげ、ちょっと考えてオムライスを注文した。それも胃におさめるとまたもカレーライスを食い、10分後にはにぎりずしをほおばった▼小説家の織田作之助は戦後の闇市で、異常な食欲の青年を見たと随筆に書いている。いくら食べても空腹感を満たせない。その青年はいわば飢餓恐怖症だった▼大阪のまちも似たようなものではないか、というのがこの商都を愛した織田の感想である。一見、たくましく復興しているが「あわれな悪あがきではなかろうか」▼今年6月の大阪府北部地震のとき阪神電車が止まった。不安げな外国人乗客を見て一人のオバチャンが運転席に駆け寄り、申し出た。「英語で車内アナウンスをしましょうか」▼その機転は素晴らしい。申し出を受け入れた運転手も会社もえらいが、次の逸話が大阪らしい。女性は知らないオバチャンから「あんた、ありがとうね」とねぎらわれたという▼2025年の万博が大阪で開かれることに決まった。まずはご同慶の至り、と申し上げたいところだが、必ずしも歓迎している人ばかりでもない▼まゆをひそめているのは、言ってみれば織田派の人々だろう。がつがつと経済効果を求める飢餓恐怖症を、はしたないと思うのだろう。でも、大阪には心やさしいオバチャンたちがいる。きっと、あんじょうやってくれると思うのだ。

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