【論説】小浜市などの全国5市町が、食に関する産業の活性化を目指して連携する組織「にっぽんA級(永久)グルメのまち連合」が今月、発足した。小浜市の狙いは、食を武器に交流人口をどう増やすか。食に携わる移住者を呼び込み、育てることで、観光地としてのレベルアップと全国発信を図る取り組みが柱だ。定住を図るには地元各界の連携がポイントで、かじ取り役となる市の手腕を期待したい。

 ■逆手に取ったアイデア■

 この組織は「本当においしいものは地域にあり、地域の人が誇りを持って作る食はA級グルメ」だとして、これを「永久に残そう」というコンセプトを掲げている。食にまつわる地元産業を持続可能なものにするのが目的だ。人材育成のほか情報発信へ向けて、来春東京に事務局を設置し専門職員を配置する。

 発足の起点となったのは島根県邑南町(おおなんちょう)。人口約1万人の同町では、地域おこし協力隊制度を活用して全国から料理人志望者を募集。食と農業を学ぶ仕組みをつくった。今年3月時点で13人が町内に移住し起業。観光客も徐々に増えているという。

 小浜市は昨年から、同町を視察するなど交流を深め、今年5月には松崎晃治市長が訪問。北海道と宮崎県、島根県の3町も邑南町と交流していたことから、方向性の一致した5市町による連携組織が誕生した。

 邑南町は以前、都会のホテルに産品を売り込んだが、求められる数量が多すぎて撤退。この体験を逆手に取り「持ち出せないなら来てもらおう」というアイデアが生まれた。今では移住者と地元農家の連携が強まり、起業した移住者を町民が支える流れも生じているという。

 ■活力アップに貢献■

 移住者増につながる可能性は、小浜市にとって魅力である。さらに、市の提唱する「食のまちづくり」へ向けて、移住者という新しい血は、観光地としての活力アップに貢献してくれるだろう。

 連携組織を活用し、まず東京を起点に人材発掘に取り組む。市によると田舎暮らしを志向する都会の若者は少なくなく、移住に関するイベントは頻繁に行われている。これまでは職員を出張させての対応だったが、東京に担当職員が配置されることで、より多くの機会を活用できる。移住者の受け入れに関しては、地元の調理師専門学校と連携する算段も進んでいる。

 ■地域に好循環を■

 課題となるのは、移住者の定着だ。邑南町では起業家の支援組織をつくるなど研修後の道筋が構築されている。小浜市で料理などを学べるとしても、その後、徒手空拳での起業は困難。手助けする方策が重要になる。

 新しい店舗が増えれば、既存の飲食店には脅威となるかもしれない。半面、切磋琢磨(せっさたくま)することで底上げにつながるとは考えられないか。地域の食の良さは、地元では案外分かりにくいもの。外の感覚を積極的に受け入れることで魅力アップへの起爆剤としたい。

 地元素材にこだわる機運が高まれば、県外客に喜ばれるもてなしがきっとできる。料理人と生産者との意思疎通を深めることで、地元産品の流通が促進され、地域経済の好循環にもつながるだろう。

 小浜市は今年、「食のまちづくり原点回帰」を掲げて多彩な施策を展開、民間でも各地で取り組みが進んでいる。市としては各方面に目を配り、効果的に成果を生み出す采配が重要となりそうだ。

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