児童に拉致について話す地村保志さん=7月、福井県小浜市宮川小

 福井県小浜市の拉致被害者、地村保志さん(63)が市内の小中学校を回り講座を続けている。6月に始まった講座はこれまで7小中学校で開催。受講人数は310人に上る。拉致された状況や北朝鮮での暮らしなど、生の証言は貴重な教材だ。地村さんは「教科書に拉致が出てきたら、おじさんの話を思い出してほしい」と優しく語りかけている。

 ⇒日本中くぎ付け、2002年の帰国

 「拉致問題と聞いたことがある人、手を挙げて」「北朝鮮の場所を知っている人?」。6月の小浜中での講座で、地村さんは最初に生徒たちに質問した。受講したのは1年生の125人。地村さんが帰国した2002年以降に生まれた子どもたちだ。

 「袋にかぶせられたまま、船から船に移されるときは死ぬかと思った」「船の上で工作員にサイダーをもらった」「(北朝鮮では)そこら中に検問所があり自由に出歩けなかった」。拉致された状況、北朝鮮での暮らし、歴史問題…。被害者本人しか話せないエピソードに、生徒たちは引き込まれていた。

 これまで7小中学校で講座を開催しており、本年度中に市内全14小中学校を回る予定だ。ある小学校の校長は「ビデオや本とは説得力が違う。子どもたちにとっても、地元で起きた身近な問題としてとらえるきっかけになる。拉致を詳しく知らない若い教員の勉強にもなる。可能な限り、講座を続けてほしい」と話す。

 講座の目的には拉致問題の風化防止もある。地村さんが拉致されてから40年。帰国してからも16年がたつ。2016年に退職後、署名活動に参加するようになった地村さんは「昔は外に出れば地村さんって言われたけど、今は僕のことを全然分からない人もいる。問題が忘れられとるなあと思うことがある」と話す。

 政府は3月、拉致問題担当相と文部科学相の連名で、拉致をテーマとした授業を小中高校で行うよう求める通知を、都道府県知事や教育長らに出している。地村さんは「被害者本人が直接話すことで、子どもたちには拉致をずっと覚えていてほしいし、解決のために少しでも力になってほしい」と話している。

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