【論説】国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法などの改正案が衆院法務委員会で実質審議入りした。失踪した外国人技能実習生に対する法務省調査が誤っていたことに関して、聴取票を点検した野党議員からは再集計結果にも疑問が続出。政府は新在留資格に実習生の多くが移行すると見込んでいる。人権侵害が横行する実習生制度を温存したままの見切り発車は看過しがたい。

 調査は昨年失踪した実習生約7千人のうち、後に所在が確認できた約2900人から聞き取った。法務省は当初、87%が「より高い賃金を求めて」失踪したと説明。その後、集計ミスが分かり、67%が「低賃金」が動機だったと訂正した。

 驚くのは、もともと聴取票の選択肢には「より高い賃金を求めて」はなく、「低賃金」「契約賃金以下」、「最低賃金以下」の項目が設定されていたことだ。最低賃金以下などは明らかに違法だ。「指導が厳しかった」「暴力を受けた」も当初の数字から大幅に上積み修正された。

 法務省は「最低賃金以下」としたケースは1%未満としたが、聴取票を閲覧した野党議員によると「ランダムに見た20人のうち17人は最低賃金割れだった」と疑問を呈している。そもそもコピーも取らせない閲覧では詳細な点検ができるはずもなく、改ざんを隠蔽(いんぺい)するかのような姿勢と言わざるを得ない。

 さらには、2015年から歴代法相が調査のまとめで「就労意欲が低下」などと実習生側に問題があるような答弁を繰り返してきた。国際社会の「現代の奴隷」という批判から目をそらそうとしてきたとしか思えない。

 山下貴司法相は衆院委でそうした人権侵害を受け罰則を設けた技能実習適正化法を17年11月に施行させたことをことさら強調したが、今年上期の失踪者が4279人と昨年を上回るペースになっている現状をどう説明するのか。

 新在留資格による受け入れ人数にも問題がある。建設や農業など14業種で19年度の1年間に最大4万7千人、5年後には最大34万5千人になるとしている。このうち実習生が移行する割合は19年度が55~59%、5年の累計では12~15万人で全体の約45%。新制度の根幹を実習生が担うことは歴然としている。

 一方で、経済産業省の説明では、日本で学んだ技術を母国に持ち帰り、同種の仕事に就く7~8割の実習生がそのまま新制度に移行することを見込んでいる。「仮置き」としたが、そんな数字を基に受け入れ数を出したこと自体が信じがたい。実習生制度は帰国を前提とした「国際貢献」であり、逸脱ではないか。

 安倍晋三首相は最大34万5千人などとする受け入れ数を、経済情勢に大きな変化がない限り、上限とする考えを示しているが、積算根拠は甚だ危うい。こうした数字を基に医療や福祉など共生施策がつくられることも危惧される。仕切り直しすべきなのは明らかだ。

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