【論説】金融商品取引法違反の疑いで東京地検特捜部に逮捕された日産自動車会長のカルロス・ゴーン容疑者。毎年10億円前後の報酬を受け取りながら、それとは別に2011年からの5年間で約50億円を手にし申告しなかったとされる。

 ゴーン容疑者は日産の「救世主」と称賛される一方、コスト削減に大なたを振るい「コストカッター」とも呼ばれた。リストラを余儀なくされた社員や取引企業関係者らは報酬隠しに怒り心頭のはずだ。

 株主らの高額報酬批判に対して、ゴーン容疑者は「人材をつなぎとめるため」「(欧米に比べ)決して高くない水準」などとしてきた経緯がある。倍の報酬を隠れて受け取っていたことをどう説明するのか。適切な税務申告だったのかの疑念も拭えない。

 日産は内部調査で虚偽記載のほか、会社資金の私的流用なども把握し、特捜部との「司法取引」に応じた。これにより日産の刑事処分は軽減される。捜査への協力はもちろん、早急に不正の全容や対策を自ら公表する責務がある。長年、不正を放置してきたことの説明も欠かせない。

 08年の米リーマン・ショックの際、金融機関の役員の高額報酬が問題視されたことを受け、金融庁が金融商品取引法を改正。10年3月期決算から年間1億円以上の報酬を得た役員の氏名や金額などを有価証券報告書に記載するよう義務付けた。虚偽記載には10年以下の懲役か1千万円以下の罰金、またはその両方、法人には7億円以下の罰金が科せられる。

 日産によると、内部通報をきっかけに数カ月間、ゴーン容疑者と、逮捕された代表取締役のグレゴリー・ケリー容疑者の不正行為を調査。ゴーン容疑者が有価証券報告書に報酬を過少申告していたことや、会社の資金を私的に支出するなど「複数の重大な不正行為」を確認したという。

 ゴーン容疑者はルノーから日産に派遣され、00年に社長に就任。工場の閉鎖や人員の大幅削減など大規模なリストラを敢行。ルノーとの生産共有化なども進め、業績をV字回復させた。

 さらにルノーのトップを兼任し、16年には燃費不正問題で経営悪化に陥った三菱自動車を傘下に収めた。日産・ルノー・三菱の3社連合のトップに君臨し、17年度の世界販売台数を2位に押し上げ、18年上半期は2年連続で首位になった。

 しかし、17年4月に日産の社長を退任し会長となって以降は、不正検査問題の発覚や、米市場での低迷など「ゴーン流」も限界にきたとの声が上がっている。

 3社連合は「扇の要」を失ったことで揺らぎかねない。業績が低迷するルノー側が日産との経営統合を目指しているとされ、今回の逮捕劇は西川広人社長らによる「クーデター」との見方もある。司法取引は今年6月からスタートし、今回が2例目。自らの刑罰を逃れるため、虚偽の証言をするという問題点が指摘される中、日産側にはより真摯(しんし)な姿勢が求められよう。

関連記事