【論説】首都圏を中心に風疹の流行が止まらない。患者報告は北海道から沖縄まで全国に広がっており、福井県内でも先月末から今月初めの1週間で新たに2人の患者が報告され、今年の患者数は4人。県は流行の恐れがあると発表した。妊娠初期の女性が感染すると赤ちゃんに障害が出る可能性があり、注意が欠かせない。

 政府は2020年度までに風疹を排除する目標を掲げている。問題は流行の中心となっている30~50代男性への対策。子どもの頃に制度変更の影響でワクチンを接種していない人が多く、接種の環境をいかに整えるかにかかる。東京五輪・パラリンピックと流行が重なる事態も想定され、早急な対策が求められる。

 国立感染症研究所の7日時点のまとめによると、今年の累積患者数は1884人。国内では12~13年の2年間に計1万6730人の患者が出る大流行があったが、今回はそれに次ぐ規模になっている。東京都の656人、千葉県の285人、神奈川県250人など首都圏で増えているほか、愛知、大阪、福岡の府県でも50人を超えるなど全国的に広がってきている。

 風疹はウイルスによる感染症で、くしゃみやせきなどで広がる。症状としては2~3週の潜伏期間後、発熱や発疹、リンパ節の腫れなどの症状が現れる。子供より大人の方が重症化、長期化しやすく、重い合併症を引き起こすこともある。経験からいえば「1週間ほど高熱が続き、そのつらさはインフルエンザの比ではなかった」が実感だ。

 何より心配されるのが、妊婦と胎児への影響だ。風疹への免疫が十分でない女性が妊娠20週ごろまでに感染した場合、胎児の心臓や目、耳に障害が出る先天性風疹症候群(CRS)の可能性が高まる。12~13年の流行時には45人のCRS児が報告され、うち11人が亡くなっている。

 かつて感染した40代男性が「親からはしか(麻疹)にかかったと聞いていたが、風疹までは確認できていなかった」と話すように、30~50代男性の中には子ども時代にワクチン接種の制度変更のはざまに置かれ受けていない人が多いため、免疫のない人の割合が他の世代に比べ高い。今回も流行の中心はこの世代だ。

 国や自治体は、妊娠を希望する女性や妊婦と同居する家族に対し、風疹への免疫の有無を調べる抗体検査を受けるよう働き掛け、補助も行っている。厚生労働省は来年度に一般の30~50代男性への抗体検査も補助に加える方針だが、しっかり周知を図る必要がある。さらには抗体検査とワクチン接種で2度も医療機関へ足を運ばなければならない負担の解消にも取り組むべきではないか。

 米国は先月、日本での流行を警戒し、免疫が確認できない自国の妊婦の日本への渡航を避けるよう勧告した。早急に手を打たないと、好調な訪日客拡大の流れに水を差しかねない。企業や事業所に働き掛けるなど成人男性の予防接種の進展に注力する必要がある。

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