【越山若水】女性が権力を握った例は日本史上に決して少なくない。その一人に今参局(いままいりのつぼね)がいる。足利義政の乳母だった人で、正妻の日野富子らと権勢を争うほど幕政に影響力を持っていたらしい▼それでも、義政を操り人事を思うままにしようとした画策は失敗した。幕府重臣が反対したからだ。権力者であっても表向きの筋を通さなければ人事は通例うまくいかない▼公私のけじめは室町時代の武家政権にも作用していたといえるが、民主国家を名乗りながら、これをあっさり軽んじた政権が現代にある。大統領夫人が高官更迭を主張、その通り実現した米国だ▼トランプ氏は今、人事刷新を考え中とされ、それで更迭のタイミングが生まれたのかもしれない。としても、「夫人の要求で辞めさせた」印象を隠そうともしないのは、政権として危うい症状に映る▼思い浮かぶのは8月に死去した米上院議員マケイン氏の逸話である。ベトナム戦争で捕虜となり、父が軍の幹部だったために解放される機会を得たが、これを潔しとしなかった▼拘束がより長い兵から解放するよう訴えたのである。このため自身の解放までさらに5年近くを要し拷問も受けたとされるが、帰国後の名声は揺るぎないものとなった▼日米関係は蜜月と評されている。悪いことではない。しかし、適切な距離感が必要な時もある。そう思うことが増えている。

関連記事