【越山若水】握手をさせてもらって恥ずかしくなった。分厚い手は何万回と粘土をこねてきた証し。武骨に見える指は土肌の破れる限界を知る。越前焼陶芸家の司辻光男さんだ▼きのう福井新聞文化賞の表彰式があった。受賞のインタビューに答え司辻さんは、越前焼を「床の間に置きたかった」と語った。意味するのは、たぶんこうだ▼越前焼は、古くから大型の甕や壺(つぼ)を作るのを得意としてきた。けれど、それらは実用一点張りで台所に置かれることもない。伝統の技を生かしつつ芸術へ―。そう司辻さんは考えたのだ▼それが文化の王道を行く営みだとすれば、あと一組の受賞に「おや?」と思った人もいるだろうか。福井商高チアリーダー部「JETS」の皆さんである▼活躍ぶりは言うまでもない。映画にもテレビドラマにもなり、いま日本で一番有名な女子高生たちかもしれない。でも、スポーツであるチアダンスがなぜ文化賞なのだろう、と▼まさに百聞は一見にしかず、だった。代表の10人が式で見せてくれたのは、鳥肌が立つほどの躍動と笑顔。人を応援する心が見事に表現され、文化賞にふさわしかった▼手前みそで恐縮ながら、福井新聞文化賞は今回で60回。還暦である。これで暦は一回り、とはいっても元に戻ったのではなく、螺旋(らせん)階段を上ったと考えたい。色とりどりの文化が花開くお手伝いをもっとしたい。

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