福井地裁=福井県福井市春山1丁目

 氏名や年齢が不詳のまま窃盗と占有離脱物横領の罪に問われた住所不定、無職男の初公判が11月15日、福井地裁であった。記憶喪失の可能性があり、名前は「思い出せない」と供述する一方、起訴内容は認めた。検察側は懲役1年を求刑し、即日結審した。福井地裁で身元が特定されないまま公判が行われるのはまれ。

 起訴状によると、男は9月9日、福井県福井市内の歩道にあった自転車を横領。同10日午後2時半ごろ、越前市内のパチンコ店で、現金約8300円と免許証など10点が入った財布(時価合計1万円相当)を盗んだとされる。

 男は体重50キロ前後で、弁護人によると30~40代とみられる。逮捕、送検した越前署によると、男は名前を言わず、身元が分かる所持品もなかった。指紋を照合しても前科前歴はなく、福井地検は「氏名、年齢不詳」で起訴した。自身の素性についての記憶はほとんどないという。

 公判の冒頭、上下ジャージー姿の男は渡邉史朗裁判官から名前や生年月日を尋ねられると「分からない」と返答。成人していることは認めた。裁判官は起訴状に添付された顔と全身の写真で、出廷した被告が起訴された男と同一人物であることを確認した。

 「関西弁だと言われるので関西出身ちゃうかなと思います」。被告人質問などで男ははきはきした口調で話し、「暖かい方へと思って、北から南に向かって歩いていた。ホームレスでお金がなく、ごみ箱をあさって食べ物を探していた。逮捕された後のことは大体覚えている」と説明。「今の目標、希望はとにかく関西に戻って記憶を取り戻すこと」と述べた。

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