原子力防災訓練で福井県おおい町の職員らからヨウ素剤に見立てたあめ玉をもらう町民=8月26日、同町ふるさと交流センター

 原発事故時に甲状腺被ばくを抑える効果がある安定ヨウ素剤。万一の際、福井県内の原発から5~30キロ(UPZ)圏住民への服用指示方法に疑問の声が相次いでいる。今夏の原子力総合防災訓練では、服用の判断根拠が不明のまま「国の指示があったから」として、県はヨウ素剤の配布訓練を行った。実際の服用は原子力規制委員会が判断するが、どのような事態の時に服用するかについて、原子力規制庁は「その時々の状況による」と答えるにとどまっている。

 UPZ圏住民は原発事故時、原則として屋内に退避。放射性物質の拡散状況を見て、必要な場合に避難することになっている。ヨウ素剤の事前配布は受けておらず、万一の際は避難途中に配布を受け、規制委の指示で服用することになる。

 規制庁放射線防護企画課の担当者は、「屋内退避をしている間はヨウ素剤の内服は必要ない。放射性ヨウ素を吸い込む可能性がある場合に、服用を判断する」と話す。

 ところが、原発から5キロ圏内の住民は事前配布を受け、放射性物質の拡散前から指示を基に、速やかに服用することが定められている。事前服用と事後服用の二重基準の運用というわけだ。

 規制庁が公表している指針には「放射性ヨウ素摂取後ではヨウ素剤の防護効果は小さくなるため、予防服用することが大切」と記している。にもかかわらず、「拡散後に避難するUPZ圏の住民の方が被ばくの可能性が高いのに、その住民の方を事後配布にするのは、明らかに不自然な対策」(市民団体メンバー)と批判の声は根強い。

 福井県は2年前の訓練で「国の指示を待って服用を」としてヨウ素剤配布訓練をしたところ、「どういう状況になったら服用の指示があるのか」「どうやって指示が届くのか」と、市民団体などから批判を浴びた。今回は指示があったという前提で訓練に臨んだが、県地域医療課の担当者は「根拠が曖昧なまま服用を呼び掛けるしかなかった」と嘆く。放射性物質の飛散量によっては即時避難を求められる局面もあり得るが、「国は拡散が落ち着いた段階での避難しか想定していないのではないか」と憤った。

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