【論説】来年10月の消費税増税に向け、対策をまとめるべき政府の対応がなかなか定まらない。12日の経済財政諮問会議では、防災対策の公共事業を増税対策として位置付ける考え方が示されたが、安倍晋三首相は締めくくり発言でこれに直接言及しなかった。すでに2019年度予算案の編成作業の時間は限られてきている。政府は早急に増税対策メニューの全体像を提示し、国会での審議を仰ぐべきだ。

 景気の腰折れを防ぐために「政策を総動員する」と言う首相としては、不自然な対応だった。石井啓一国土交通相が会議に提出した資料は、防災・減災対策の公共事業について、消費増税後の景気下振れを防ぐ意義を明記している。首相はこれに対し、「国民の安心安全と経済基盤を確保する上で喫緊の課題」と述べたものの、増税対策としての評価は避けた。

 また、会議の民間議員は「消費税率引き上げをしっかり乗り越える対応」を求めた上で「増税と同じタイミングで最低賃金を引き上げていくことが重要」との提言を行った。

 ところが会議後の会見で受け止め方を問われた茂木敏充経済再生担当相は、なぜか「その話が出たのは引き上げ対策の文脈ではない」と答え、取り合おうとしなかった。

 確かに最低賃金の提言は経済全体を見通した内需拡大策の一環として言及されたもの。しかし民間議員は今回、増税対策として「実質的な所得減を和らげる需要喚起策」も同時に求めている。両者は密接に関係した論点で、切り分けられるはずもない。これでは、増税対策論議の本格化を首相周辺が避けているかのような印象が生まれてしまう。

 日本経済は回復基調が続いているが、賃金の本格上昇局面はまだ遠いのが現状だ。個人消費の指標も、このところ弱い数字が目立っている。14日発表の今年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値で、個人消費は前期比0・1%減と、2四半期ぶりのマイナス。自然災害の影響が続いたとはいえ、気がかりな落ち込みである。

 消費の水準自体も、今年4~6月期GDPで個人消費を示す民間最終消費支出は301兆円だった。前回の消費増税直前の駆け込み需要があった14年1~3月期の305兆円に届いておらず、13年10~12月期の300兆円をわずかに上回った程度である。

 来秋の増税が迫る中で、対策の議論を一刻も早く本格化すべきなのはいうまでもない。とりわけ、賃金引き上げは重要になる。9月の毎月勤労統計で実質賃金は前年同月比0・4%減。政府は小手先の策に走らず、こうした課題の克服にこそ正面から取り組むべきだ。企業の生産性向上の支援も欠かせないだろう。

 議論が目に見える形で進むこと自体、消費者の安心につながる効果もあるはずだ。ポイント還元策やプレミアム付き商品券など、部分的な施策だけが小出しされる現状は早く脱する必要がある。

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