【越山若水】「謝り方」を書いたビジネス書は、多種多様である。「謝罪マスター」を名乗る著者までいる。トラブルに悩み、すがる思いで手に取る人がそれだけ世に多い証しだろう。著名人の謝罪は必然、注目を浴びる▼本の知識に頼らずとも、この人の場合は良くない見本だとすぐ分かった。ちぐはぐ答弁を連発している桜田義孝五輪相の会見である▼何しろ誰に謝っているのかすら曖昧。記者に聞かれ、ようやく口にしたのが「蓮舫さんに対する謝罪と解釈して結構」「国民に、を含めても結構」。ここまで言葉を選ばない政治家も珍しい▼加えて「以前の会見でも謝った」と、せずともよい強弁をするから反省などしていないことが丸分かり。こんな会見からは五輪・パラリンピックに不安が募る結果しか残らない▼それでも、どれほど点数が低くても桜田氏は謝った。もっと驚いたのが霞が関である。障害者雇用水増し問題で処分を考えている府省庁が一つもない▼厚生労働省の言い分は「違法行為がないから」だ。長年、多くの人の雇用機会を奪い、組織の信頼を地に落としていても、厚労省にとっては「処分に値しない」ことなのだ▼官僚は失敗を認めないとよく聞くが、処分や謝罪がなければ反省も再発防止もない。政治家たちもこの局面でなぜ指導力を発揮しないのだろう。同様の不祥事が、また起きないかが心配だ。

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