【論説】外国人労働者の受け入れ拡大に向け、新たな在留資格を設ける入管難民法などの改正案が衆院本会議で審議入りした。ただ、政府は制度の根幹である受け入れ対象業種や規模の公表に関しては「精査中」と述べるにとどまっている。来月10日の臨時国会会期末までに成立を期すとしているが、支援策などを含めた詳細を成立後に省令で決める算段が透ける。白紙委任は国会を軽視するものであり断じて許されない。

 改正案は深刻な人手不足を背景に、これまで医師や研究者など「高度な専門人材」に限ってきた在留資格を単純労働を含む分野でも解禁する。在留資格の更新を重ねれば永住も可能になり、社会のありようを大きく変えることにもつながる。来年4月の導入を目指しているが、統一地方選や参院選で、経済界などに成果を誇るためなら禍根を残すと言わざるを得ない。

 6月の「骨太の方針」の時点では対象を5業種としていた。だが、その後各業界団体の要請を受けて14業種に増えている。所管省庁で受け入れ数などを精査しているのだろうが、日本人の雇用や待遇などに影響を及ぼすか否かの見極めは困難を極めるはずだ。「近日中」に公表されたとしても実効性を伴う数字なのか、熟議が求められよう。

 とりわけ、受け入れの大半を占めることになるされる在留資格「特定技能1号」について、政府は「一定技能が必要な業務に就く」とし単純労働との違いを強調するものの、具体的な線引きは曖昧だ。受け入れ企業などに日本人と同等以上の報酬を求めるともしているが、具体策は明らかにされていない。

 現状で単純労働の支え手となっている外国人技能実習生や留学生は「安価な労働力」として酷使され、違法残業や賃金不払いなどにさらされている実態がある。実習生の失踪は昨年7089人、今年上期で4279人にも上っている。こうした状況を置き去りにしたまま新制度に移行するのは無責任というほかない。

 外国人労働者に対する医療費や年金など社会保障を巡る疑問も払しょくされていない。日本の健康保険に加入すれば、母国にいる扶養家族も適用対象とされる現行制度を改正する方針を示している。ならば今の国会で審議すべきだろう。一方で、将来の給付の見通しがないまま年金保険料を払わされる問題も残る。

 現状の法務省入国管理局を「出入国在留管理庁」に格上げし、支援も含め管理に当たる方針だ。職員の増員も見込んでいるというが、4月までに機能する組織たり得るのか。課題山積の技能実習生制度の二の舞いになる懸念が拭えない。

 安倍晋三首相は相変わらず「移民政策ではない」を繰り返す。不法滞在者の増加、治安悪化など国民不安に配慮する意味合いもあるのだろう。だが「期限付き」や「家族の帯同は認めない」を強調し、「労働力」「雇用の調整弁」としか見ない姿勢では、選ばれる国になれるとも思えない。

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