(C)松竹ブロードキャスティング

 松竹ブロードキャスティングによる「作家主義」「俳優発掘」を掲げたオリジナル映画プロジェクトからは、『滝を見にいく』(沖田修一監督)、『恋人たち』(橋口亮輔監督)などの秀作が生まれている。これはその第6弾で、橋口や熊切和嘉、大森立嗣、石井裕也といった気鋭の監督たちを助監督として長く現場で支えてきた野尻克己の監督デビュー作だ。

 自身の体験を投影させたオリジナル脚本により、突然長男を失った家族の再生を描く。息子の自死を目撃したショックで母親が入院。その際の記憶を喪失した彼女のために、父親と長女は、「長男はアルゼンチンで元気に働いている」と周囲を巻き込んだ一世一代の嘘をつくが…。

 “家族”と“嘘”は、どちらも映画と相性がいい。野尻監督は、それを巧妙に組み合わせることで、スリルと笑いを生み出していく。ただし、その笑いは、深田晃司の『淵に立つ』『歓待』のようにテーマやスリルと表裏一体をなさず、あくまでもスパイス。それでもエスニック料理のようにふんだんに効いているから、重い題材を程よく中和してくれる。日常を丁寧に積み重ねるホームドラマの基本に忠実な語り口にも好感が持てる。

 ちなみに、このプロジェクトの第7弾は、『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督に決定している。日本映画の未来のためにも応援したいプロジェクトだ。★★★★☆(外山真也)

監督・脚本:野尻克己

出演:岸部一徳、原日出子、木竜麻生、加瀬亮、岸本加世子、大森南朋

11月16日(金)から全国公開

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