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 「黒いワシ」「ナントに雨が降る」などの曲で知られるシャンソンの女王バルバラの映画だ。ただし、伝記映画でもドキュメンタリーでもない。主演のジャンヌ・バリバールが演じるのは、映画でバルバラを演じる女優。つまり映画が作られる過程を扱ったバックステージものなのだが、だからといって産みの苦しみや映画愛が前面に押し出されるでもない。その意味で、ちょっと見たことのないタイプの映画である。

 では、テーマは何か? 劇中では、歌手でもあるバリバールがバルバラの曲を歌い、女優としても活躍したバルバラの映像が挿入される。しかも、顔立ちの似た二人の映像が、意図的に区別がつきにくいように編集されているのだ。これはもちろん、主人公の女優がバルバラになりきることに取り憑かれ、自身とバルバラ、現実と虚構の境が曖昧になっていくことを視覚的に表現したものなのだが、それだけではない。

 実は本作には、前のカットで本を手渡された人が次のカットではその本を持っておらず、カットが変わるとまた持っているという編集上のミスがある。だが、他のシーンは人物の動きまで緻密に計算されているのに、ここだけ本が手渡されるのも唐突なら、カット割りも不自然。果たして本当にミスなのか? さらに、監督と劇中の監督役が同じバリバールの元夫マチュー・アマルリック…と、どこまでも手が込んでいる。

 そこから浮かび上がるのは、バルバラやバリバールの魅力以上に、映画という表現手段の魅力=可能性だろう。アマルリックは、虚実のあわいを通じて、映画表現のあわいに迫っているのだ。★★★★★(外山真也)

監督・脚本・出演:マチュー・アマルリック

主演:ジャンヌ・バリバール

11月16日(金)から全国順次公開

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