【論説】医療機器を備えたヘリコプターに医師や看護師が同乗し、救急患者の待つ現場に向かい救命処置を行うドクターヘリ。福井県でも初めて嶺南地区で運航が始まった。京都府と滋賀県が運用する京滋ヘリに相乗りする形で協定を結んだ。

 9月29日にスタートして1カ月半。出動要請は4件、実際の出動は3件と多くはないが、需要は確実にあることが判明。また現場まで短時間で到着することが可能で、救急対応を担当する消防本部などには心強い存在になっている。

 救急医療の充実に向けまさに第一歩を踏み出した。今後は岐阜県、石川県と共同運用について協議を進め、県内全域をカバーする体制を築くという。

 ■全国45道府県で導入■

 ドクターヘリは1970年のドイツが発祥とされる。高速道路で交通事故死亡者が激増。その対応にドイツ自動車連盟が採用し、死亡者が3分の1に減少する顕著な成果を上げた。

 日本でも2001年に岡山県など5県で初めて登場。しかし5年間で11機と低迷した。そこで07年に「ドクターヘリ特別措置法」を制定し、総務省が運航費用の半額補助を打ち出すと、一気に導入が加速した。

 今秋に石川県が単独で、福井県が共同運用を始めたことで、45道府県で53機を配備。残るは東京都と香川県のみで、ほぼ全国を網羅する体制が整った。

 ヘリ導入に伴い患者の搬送件数も年々増えている。04年には7機で3365件だったが、11年には32機で1万3008件、16年度は51機で2万5216件と活躍ぶりが目に見える。

 ■30分前後で現場到着■

 福井県の場合、関西広域連合が運用し済生会滋賀県病院(栗東市)を拠点とする京滋ドクターヘリが嶺南全域をカバー。出動基準は119番の内容が設定された言葉と合致すれば、消防本部が要請するキーワード方式。救急車とヘリが合流するランデブー・ポイントとして、学校グラウンドや公園、漁港など92カ所を選定した。

 初めての出動は10月6日。高浜町の関西電力高浜原発で鉄材が作業員に落下。ヘリは旧音海小中校庭に着陸し搭乗の医師が作業員を治療。小浜市の若狭ヘリポートまで搬送した後で小浜病院に入院した。

 翌7日には敦賀市の北陸自動車道で親子5人が乗った乗用車がガードレールを破り転落。また18日には同市の国8トンネルでトラック衝突事故が発生。ドクターヘリが愛発公民館などに出動し患者を搬送した。

 救命者は今のところ1人だけだが、現場到着までに要した時間はそれぞれ33分、29分、23分と目標の「30分」をほぼ達成し迅速性を発揮した。

 ■岐阜、石川と協議へ■

 嶺南ドクターヘリは初年度半年で約50回の出動を見込み、県は1500万円の予算を計上した。また共同運航で要請が重複した場合、大阪府が京都府をカバーすることも確認済みだ。

 県内の救急車の搬送時間は平均31・9分で全国3位と短時間である。ただ奥越など一部地域はまだ搬送に時間を要する。県地域医療課では、隣県との共同運用方式で適用エリアを拡大し不安を解消する方針だ。

 岐阜県とは現在、旧和泉村を対象に協議を進めている。また9月に運航を開始したばかりの石川県とは、運用実績を考慮した上で来年度から協議を始めることにしている。

 東日本大震災や熊本地震など大規模災害ではドクターヘリの役割は重大として、厚生労働省は都道府県の体制整備や連携強化を求めている。本県も単独運航を含めたよりきめ細かな検討が必要だろう。

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