【論説】米中間選挙で最大の焦点となった下院は野党民主党が多数派を奪還した。「米国第一」を掲げてオバマ前政権の政策をことごとく退け、強硬な移民政策や露骨な人種・女性差別主義に傾くトランプ氏に対して米国民が「ノー」を突きつけた格好だ。

 ただ、20年の大統領選を巡り、トランプ氏に有利となったとの見方もある。自らの公約遂行が停滞した場合、責任を民主党になすりつける手法も可能だからだ。今後も対立の激化が予想される中、対外政策などで「予測不能」が加速する懸念も拭えない。

 それにしても中間選挙がこれほど世界的に関心を集めることがこれまであっただろうか。トランプ氏の統治スタイルがかつてない想定外のものだからだろう。

 それは選挙戦でも際立っていた。好調な経済や雇用情勢を成果と誇示していればよかったはずが、最終盤になって反移民感情をあおる戦法に出た。中米から来る数千人の移民集団の流入阻止に向け、軍の派遣を決定したことなどを声高に訴えた。全ての選挙区で通用するはずもなく、裏目に出たとの見方もある。

 共和党は改選議席の少なかった上院では過半数を確保。トランプ氏が最高裁判事などの重要ポストの承認権を持つ上院に注力したためだろう。一方の下院は選挙終盤に「全ての選挙区に応援に行けるわけでもない」と述べるなど、劣勢と見限ったようだ。

 これで共和党は予算編成を主導できなくなり、トランプ氏が提唱する医療保険制度(オバマケア)の撤廃やメキシコ国境の壁建設、追加減税などの実現は遠のいた。内政に関しては手足を縛られた形になる。

 一方、次期大統領選に向けて成果を示す場が、民主党の権限が比較的及ばない外交になることは必至だ。

 対中国政策は、党派を超えた支持もあり、強硬の度合いが増すことは目に見えている。新たな「冷戦」の様相が濃厚だ。ただ、貿易戦争のダメージは米中にとどまらず、世界経済を冷え込ませる要因として表面化しつつある。

 矛先は日本にも向く。年明けから始まる日米交渉では「他の貿易、投資についても交渉する」と明記した共同声明に則して事実上の2国間自由貿易協定(FTA)に踏み込んでくるとみた方がいいだろう。

 米朝交渉では、安易に朝鮮戦争の終結宣言に同調するような事態になった場合、日本に向けられる中短距離ミサイルは温存され、脅威を抱えたまま経済支援を余儀なくされる可能性もある。拉致問題が置き去りになる恐れもある。

 今回の中間選挙で、米国民のバランス感覚が働いたとする以上に、「分断」が一層深まったとみるべきだろう。トランプ氏は2年後に向け、コアな支持層向けの政策を一段と鮮明に打ち出すはずだ。その都度、衝撃が世界を揺るがす。そんな事態を避けるためにも、蜜月を自賛する安倍晋三首相は、日本の役割として対米説得に注力すべきだ。

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