【論説】福井の冬の味覚、越前がに漁が6日解禁となった。今季注目されるのは9月に国の「地理的表示(GI)保護制度」に登録されて初めての漁期を迎えたことである。新たなブランド価値を築く約4カ月半となるのか、動向を見守りたい。

 地域の伝統的な農林水産物などを知的財産として保護するGI制度は2015年度に始まり、越前がには全国69品目目、県産品では六つ目の登録となった。カニでの登録は国内初とあって、解禁日の越前漁港では西川一誠知事が競り開始の鐘を鳴らすなど「GI元年」を祝うムードに包まれた。

 GI登録のポイントとなったのは、品質管理で高い質を伴った操業をしている点である。越前町漁協や三国港機船底曳(そこびき)網漁協では船内に海水冷却装置付きの水槽を導入したり、下氷を敷いた魚箱で保管するなどして漁獲後も生かし、鮮度を保ったまま水揚げするよう徹底してきた。越前がにの漁場は港から近く、もともと他産地に比べ鮮度に優位さがあったのを突き詰めた取り組みという。

 背景には、雄のズワイを巡って厳しさを増す国内の産地間競争がある。鮮度に関しては身詰まりはもちろん、カニみそなどへも影響が大きい。まさに味の要であり、目利き力のある流通業者と高値で取引するためには品質の高いカニを安定して水揚げする必要がある。両漁協はこの点を意識した取り組みを30年余りにわたって展開。現場も設備投資を惜しまず冬場の厳しい海の上で品質を高める作業を地道に進めてきた。努力の積み重ねが今回、国から保護すべき品質としてお墨付きを与えられた形だ。

 今後は国内ばかりか海外においてもGIマークを使った販売で他産地と差別化を図ることが可能となった。登録を後押しした県は「国内外での知名度と販売力を高める延長に、観光振興効果などにもつながれば」(水産課)と期待する。

 さらに越前町漁協では、新たに製作したGI専用タグの裏側に船名を入れる取り組みにも着手した。ブランド価値を高める上で大切なのは何といっても消費者の信頼。GI登録を機に、漁業者が直接、品質に責任を持って操業する産地へと発展するよう努力を続けていく覚悟を示す。越前がに漁では資源保護に関しても積極的で、この点も含めて発信を強めれば好感度は一層増すはずだ。

 ちょうど来年は越前がにが県の魚に指定されて30年を迎える。最上級「極(きわみ)」と合わせたブランド効果で収入を増加させ、経営が安定すれば、課題となっている後継者問題などにも対応する力が高まると期待される。国内の先頭を行く持続可能な産地づくりを一段と進める弾みの漁期としたい。

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