全日本大学駅伝を前に記者会見する東洋大の酒井俊幸監督=11月2日、名古屋市

 3位でゴールする東洋大のアンカー・相沢晃=伊勢神宮

 全日本大学駅伝は、青山学院大が「横綱相撲」を見せた。

 6区までは東海大の先行を許したが、7区に入って主将の森田歩希が逆転。終わってみれば「青学強し」をあらためて印象づけた。

 青学大の2年ぶりの大学駅伝三冠まで、残すのは箱根駅伝のみ。距離が長くなればなるほど力を発揮する選手が多く、三冠達成の確率は80%以上と見ていいだろう。

 もし、箱根で青学大を脅かすとするなら、すべての準備を完璧に整えた東洋大しかないだろう。

 その東洋大は、全日本では序盤の遅れが響き、見せ場を作ることなく3位に終わった。

 酒井俊幸監督は、こう振り返った。

 「2位の東海さんには追いつけると思ったんですが…。2区、4区で流れを止めてしまったのが痛かった。青学さんにしても、前半は百パーセントの走りをしていたわけではなかった。箱根を見据えた時に、まだピークに持ってきていないな、ということさえ感じます。その意味で、青学の選手たちは最低限の仕事のレベルが高いですね」

 それを支えているのは「プライド」だと酒井監督は見ている。

 「チャンピオンチームとして、妥協を許さない姿勢が徹底していると思います。先行されても、最後は絶対にチームとして負けられないというプライドが共有されている気がします。ただし、うちとしても箱根は諦めるわけにはいきません」

 箱根駅伝。東洋大は2009年に初優勝して以来、ずっと3位以内をキープし続けてきた。

 「この10年、厳しい時期もありましたが、スタンダードを下げたことはありません。3位でいいやと思えば、5位になる。5位になれば、10位のシード権確保でいいやと基準が下がっていき、やがては予選会が当たり前になってしまいます。箱根では11年連続の3位以内を最低限の目標にして、選手を信じて2カ月間、練習に取り組んでいきます」

 この10月には、部内での暴力問題が報道され、選手たちへの影響も少なからずあった。酒井監督は、選手たちの「修復する力」に期待を寄せる。

 「長い人生を過ごしていくうえで、いい経験をしたと思えるように導いていけたら、と思っています。厳しい経験をして、そこから立ち直る力を発揮してくれれば」

 人間的な成長は、ランナーとしての成長にもつながるという。

 陸上において、メンタリティーは非常に重要な要素である。この山を乗り越えれば、選手たちは東洋大らしい選手になってくれると、酒井監督は信じている。

 「柏原(竜二・2009年に5区を走ってごぼう抜き。「山の神」と呼ばれた)のように、劣勢になったとしても絶対に諦めない姿勢をエース級の選手たちには見せてほしいです。そのレベルになれるよう、指導者としては見守っていかなければならないと思います」

 箱根駅伝に向けて、それぞれの大学にはそれぞれの物語がある。

 今季の東洋大は、このままでは終わらないはずだ。

生島 淳(いくしま・じゅん)プロフィル

1967年、宮城県気仙沼市で生まれ。早大を卒業後広告代理店に勤務し、99年にスポーツライターとして独立。五輪、ラグビー、駅伝など国内外のスポーツを幅広く取材。米プロスポーツにも精通し、テレビ番組のキャスターも務める。黒田博樹ら元大リーガーの本の構成も手がけている。

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