【論説】日本とインドが10月末の首脳会談で、2国間関係の一層の緊密化を図ることで一致した。インドは経済成長が著しく、特にIT産業は世界有数の急速な進化を遂げる。デジタル分野を中心に、経済連携の強化で合意したことは意義が大きい。両国の結びつきを官民で推進し、アジア外交の新たな軸にしたい。

 インドのIT関連サービス売上高は2016年度に1540億ドルと、1999年度比20倍近くに急伸し、雇用は370万人(武鑓行雄氏著「インド・シフト」)。中心地は南部の高原地帯に位置する都市バンガロール(ベンガルール)。同国IT産業の3分の1を担う拠点で、インドのシリコンバレーとも呼ばれる。

 米国との時差がほぼ半日で英語が準公用語であることを利点に、米国企業のソフト開発工程を一部引き受ける業態などで発展した。米国からみれば「夜発注すれば、朝には作業が進捗(しんちょく)している」ビジネスパートナーである。さらに同書によれば、現在は技術力が磨かれたことで単なる外注拠点にとどまらず、研究開発拠点としての地位を築いた。世界中の有名企業が争って進出しており、日系企業も急増している。

 日本とインドは05年以降ほぼ毎年、交互の首脳訪問を行い、地下鉄整備、新幹線システム導入などで協力してきた。16年には日本からの原発輸出に道を開く原子力協定に署名している。

 今年5月には、デジタル分野の起業促進で合意。今回の首脳会談ではこれをさらに進め、IT人材育成、人工知能(AI)開発、次世代ネットワーク普及など幅広い分野で「日印デジタル・パートナーシップ」を推進することを決めた。

 デジタル分野でいまや世界の先頭グループにいるインドとの連携は、日本企業にメリットが大きい。日本政府は、民間のインド投資や人材交流などのサポートに力を入れるべきだ。

 留意したいのは、インドにとって、中国というやっかいな隣国があることだ。日本は、中国に寄りすぎればインドの不信を招く。逆に日印接近が中国を警戒させるような事態もインドは望まないはずで、慎重なかじ取りが必要だ。中国、インド両国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)のスムーズな妥結に向けて日本が貢献し、アジア全体の発展、安定を図ることが重要になる。

 インドは核拡散防止条約(NPT)未加盟の核保有国である。共同声明で日本側は、インドが署名していない包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効の重要性を強調した。こうした努力は今後も続けなければならない。

 インドは一部に治安や環境問題などを抱えるが、デジタル分野以外でもインフラ整備や健康関連、エネルギーなど、可能性のある分野は多い。今回の会談は外務・防衛閣僚会議(2プラス2)開催で合意、安全保障の連携強化が進むこととなったが、経済における戦略的パートナーとしても協力関係を発展させたい。

関連記事