染色加工の各社は、染料の高騰で経営環境が厳しくなっている=福井県福井市のサカイオーベックスの工場(同社提供)

 繊維製品の染色加工を手掛ける福井県内各社が、染色に使う染料の高騰に直面している。原材料を含め染料の大半を輸入する中国で、環境規制が強化された影響で減産や生産中止が相次いでいるためだ。ここ1年で2~3倍の価格となっている染料もあり、染色を主力とする県内企業は「自助努力ではどうにもならない」と、原糸メーカーなど取引先と加工料金の引き上げ交渉を進めている。中国の多くの染料工場で生産再開時期の見通しが立たない上、電力、物流費も上昇傾向にあり、各社は厳しい経営が続いている。

 ■募る危機感

 「染料が不足し始めたら大変なことになる。各社が取り合っている状況だ」。染色加工を主力とするサカイオーベックス(福井市)の土田雅幹専務は危機感を募らせる。ユニホーム向けやカーシートなど機能性が求められる染色加工を多く手掛ける同社は、高価な染料を使う必要があるため影響は大きい。耐光性のある染料「ブルー56」が特に高騰しているという。

 「電気料金などは自助努力で負担を抑えられる部分もある。ただ、染料は中国から買わなければ生産できない。(取引先に)加工料金の是正を求めざるを得ない」と土田専務。電力、重油、液化石油ガス(LPG)などの価格も上昇傾向にあり、コストは膨らむ一方だ。2019年3月期決算では前期比で減益を予想する。

 東洋染工(坂井市)は「コスト削減に取り組んでいるが、染料の高騰分をカバーできるほどには至っていない」。セーレン(福井市)は「製品に価格転嫁せざるを得ない」と話す。

 ■増産は不透明

 環境問題が深刻化する中国では、中央政府が改善に向けて汚染水の排出量制限を設けて規制を強化。基準を満たさないメーカーは工場の操業停止や閉鎖を余儀なくされ、その結果、染料の高騰につながった。県内企業によると、9月ごろには中国での染料の増産が見込まれていたが、実現しておらず、この先も不透明な状況という。

 県染色同業会は、会員企業7社の実情を調査。今年7月時点での染料の平均価格は、前年同期比で23%上がった。他の要因を含め、生産コストは上昇が続いているとしている。これを受け、同業会は染色加工料金の是正を求める文書を作成し、取引先への説明に使ってほしいと9月に会員企業に配布。石塚利栄専務理事は「苦しんでいる企業の現状を理解してもらいたい」と訴える。

 ■業界全体で認識を

 染色加工料金の引き上げに関し、取引先企業の東レは「複数の企業から要請を受けている。産地企業の皆さまと個別に話し合い、実態に合った料金設定となるよう努めていく」とする。業界関係者によると、東レなど原糸メーカーは染色加工料金の引き上げ分やコスト増の転嫁に向け、生地の料金改定をアパレル企業など取引先に要請しているという。

 ただ、複数の染色加工会社の担当者は「最終製品を販売するアパレル各社の理解が進んでいない。自社が携わらない工程に関心の薄い繊維業界の縦割り体質を表している」と嘆き、料金是正に向けた交渉が難航していると明かす。「染色加工料金は最終製品の販売価格の数十分の一に過ぎない。料金を数%引き上げたとしても、別の部分で吸収できるはずだ」と話し、業界全体で染料高騰の現状を認識することが必要と指摘している。

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