【論説】大学医学部の入試で、合否判定に不正がまん延していた疑惑が一層深まったと言わざるを得ない。

 文部科学省幹部の汚職事件をきっかけに東京医科大で発覚した入試不正。文科省が全国81大学を対象とする緊急調査で、複数の大学に不正の疑いがあることを明らかにし、女子や長期浪人生は面接試験などでより高い評価を得ないと合格にならないといった「不適切な可能性が高い」とする四つの事例を示した。

 調査中を理由に大学名や校数は公表していないが、不適切な事例に当たる大学には自主的な公表を求めている。本格的な受験シーズンを間近に控えた受験生の混乱を避けるためにも、当該大学は改善策を含め早急に説明すべきだ。応じない大学があるならば、文科省自身が動くなど毅然(きぜん)とした態度で臨む必要がある。

 文科省が不適切な可能性を指摘したのは▽書類審査で現役生に加点し、長期浪人生には加点しない▽長期浪人生や女子は面接でより高い評価を得ないと合格させない▽卒業生の子女ら特定受験者は合格圏外でも合格させる▽繰り上げ合格を伝える際、総合得点下位の特定受験者に先に連絡―といった事例だ。

 加えて「疑惑を招きかねない事案」として▽出願書類に家族の氏名や職業、出身校を記入させる▽補欠合格者の決定を学長、学部長らに一任▽面接での年齢による取り扱い差異をマニュアルで容認―など五つの事例も挙げている。

 疑惑の震源となった東京医大では少なくとも2006年から、妊娠や出産で医師数確保が難しいとされる女子や3浪以上の男子を実質減点するなどし合格者数を抑制。今年と昨年には寄付を期待して卒業生の子など特定受験者19人に不正加点していた。第三者調査委員会は、この2年で本来合格していた女子55人ら69人が不合格となったとする1次報告書をまとめている。

 既に昭和大が現役と1浪の受験生だけに加点し、卒業生の親族を優遇したことを認めたほか、順天堂大は女子の合格ラインを高めに設定していた疑いを文科省から指摘され、第三者委員会を設けて11月中をめどに検証を進めている。

 文科省の過去6年間の男女別合格比率調査では、順天堂大が1・67倍と最も男女差が大きく、昭和大は1・54倍で3番手、東京医科大は1・29倍だ。81校のうち8割の63校で男子が女子を上回った。調査から当然、疑いの目が向けられてしかるべき大学は早急に不正の有無を説明する必要があるだろう。

 募集要項で説明すればクリアできたとの指摘もあるが、差別を公認するかのような要項では受験生にそっぽを向かれてしまうことは必定。大学側の都合だけで得点操作するという理不尽な扱いが横行している現状に、医学部を見限る受験生さえ出てきていることを重く受け止めるべきだ。文科省は自主性を尊重し大学名の公表は難しいとしているが、誤った自主性を放置していいはずがない。

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