飲酒運転の犠牲になった父の写真を前に思いを語る長女。家族旅行で孫を抱っこしたり、誕生日に笑顔を見せる在りし日の姿が写っている=9月16日、福井県内(画像の一部を加工しています)

 数年たった今でも、ふとした瞬間に涙が出る。「悲しみよりも、一生消えない悔しさがある」。飲酒運転をした相手の男は懲役刑を終え、既に出所した。「私たち残された家族にとって、事故ではなく“殺人”なんです。じいちゃん(同居していた父)=当時70代=はまじめ一筋だった。曲がったことが大嫌い。なのに男に飲酒運転で命を絶たれて、一番悔しいのは本人だと思う」。40代の長女は怒りを込めて語る。

 数年前の秋、午前6時前だった。健康のため毎朝ウオーキングする父は、福井県内の近所の県道で横断歩道を渡っていた。横から突っ込んできたのは、飲酒運転で飲食店をはしごし、最後も飲酒運転で帰宅する男の車だった。時速約60キロで走行。急ブレーキは間に合わず、激しく衝突した。

 「帰りが遅いな」と思っていた直後、警察から救急搬送されたと電話があった。1時間ほど前、家で救急車の音は聞こえていた。それがまさか父で、死亡事故で、飲酒運転だとは思ってもいなかった。父の着替えを持ち、病院へ行った。出てきた医師が突然告げた。「亡くなられました」。驚きと悲しみで、体の震えが止まらなくなった。

 死因は骨盤を折るなど外傷性ショック。引きずられてめちゃくちゃになったカッパ、割れた眼鏡…。警察へ遺品を取りに行き、飲酒運転だと知った。葬式を終え、激しい怒りに変わった。

 男は酒気帯び運転と自動車運転過失致死罪で起訴された。過去にも泥酔状態で人身事故を起こし、有罪判決を受けていた事実も知った。「飲酒運転でなければ横断歩道を歩いていた父に気付き、止まれたはずだ」と、自ら法廷で意見陳述した。声を詰まらせながら「社会でこれほど飲酒運転根絶が叫ばれているのに、人を殺すまで分からないのか。命が尽きるまで罪を背負い反省してほしい」と強く訴えた。

 親子3世代で行った家族旅行、家で祝った誕生日…。「ただただじいちゃんを返してほしい」。記憶がよみがえるたび思う。「殺された父にできる限りのことをしたい」と民事訴訟も起こし、損害賠償も認められた。

 9月、「モーニング娘。」の元メンバーが飲酒ひき逃げし、人がはね飛ばされる映像をテレビで目にした。「じいちゃんはもっとひどいはねられ方だったんだろうなぁ」と涙があふれ出た。「これだけ飲酒運転が厳罰化されているのに。今は代行やタクシー、電車など何でもある。なぜいまだに飲酒運転するのか」

 父の命を奪われ、車は「走る凶器」だと実感した。「万全の健康状態で乗るべきものなんです」。摘発されるのは“氷山の一角”。警察の取り締まり強化やさらなる厳罰化が必要だと訴える。「飲酒運転をしたら二度と免許を取得できないようにしてほしい。一生自転車で過ごしてください」。

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 飲酒運転は後を絶たず、福井県警の今年の検挙数136件(9月末現在)は昨年を48件も上回っている。被害者遺族の憤り、違反者の後悔などを聞いた。

 ⇒【連載】飲酒運転の大罪 福井の現場から

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