【論説】高浜町出身の高僧、釈宗演(しゃくそうえん)の偉業を伝えようと、同町内の有志が「顕彰する会」をつくり、多彩な取り組みを進めている。宗演は禅を世界に広め、明治以降の数々の著名人が師事した人物ながら、これまで地元でもほとんど顧みられずにきた。今年は没後100年の節目。これを契機に、町民の誇りとなるよう、町を挙げての顕彰が期待される。

 宗演は1859年、高浜町若宮生まれ。幼少から同町や小浜市の寺で修行した。その後、県外に出て85年、慶應義塾に入学。英語などを学び87年、セイロン(現スリランカ)へ留学した。

 92年、円覚寺派の管長となり、93年には米国で開かれた第1回万国宗教会議に出席して仏教を説き、「ZEN(ゼン)」が世界に広がるきっかけをつくった。福沢諭吉、山岡鉄舟らと親交があり、宗演に師事した人物には夏目漱石をはじめ政界、経済界などの著名人が名を連ねる。

 これほどの郷土の偉人ながら、戦後はぱったりと知られなくなった。地元の「顕彰する会」では、宗演が日露戦争で従軍布教師を務めるなどしたことから「軍国主義を連想させるため半ば封印されたのでは」と推測するが、定かではない。

 50年前の福井国体の年、同町内の生誕地に碑が建立されたものの、高齢の同会会員も昔は宗演の名を知らなかったという。

 宗演について伝えられていないことを惜しみ、地元有志が2016年、「顕彰する会」を発足させた。生誕地の碑の横に新たに「略歴碑」を建立。28日には高浜公民館で顕彰碑を除幕、没後100年記念行事を開催した。

 さらに町内の小学校で功績を紹介する授業や、区長会での学習会を開催。パンフレットをつくったり、PR看板を設置したりなどと幅広く認知度向上を図っている。9月には県内在住の外国人を集め、宗演について学び参禅するバスツアーも行うなど意欲的だ。

 宗演は明治、大正期のさまざまな人たちに影響を与え、仏教者としても日本有数の高僧だ。禅を世界に広めた偉業のみならず、その思想、哲学を知ることは、現代に生きるわれわれにとって意義深いのではないだろうか。

 宗演の人生を描いた漫画が今年、発刊された。今後、書籍やメディアで紹介される機会が増えるかもしれない。宗演が再発見され、国内外で知名度が上がれば、和田海水浴場や青葉山の薬草事業などと合わせ、同町を広く知ってもらえることにもなりそうだ。顕彰活動は県の補助など公的支援も受けているが、さらに町ぐるみの活動に広げ、町民の誇りとして長く伝えてもらいたい。

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