【越山若水】男は漢字でものを考えたがる。長く漢文が正文とされてきたせいか、お役所の漢字志向は特に強いらしい。その典型と言っていいだろうか▼障害者雇用の水増し問題で、政府の検証委員会が公表した結論は「恣意的(しいてき)だが意図的ではない」。すんなり理解できない記者たちから、会見で質問が繰り返されたと、記事にあった▼むろん、当方も理解できない。「恣意的」という言葉には目的意識はなく、一方の「意図的」には何か考えがある。意味の違いは分かるが「恣意的」だとの判断にとどめた理由が疑問だ▼10年も前に辞めた人を雇用数に含めた行為が、ただのうっかりだろうか。眼鏡をかけているのに、裸眼の視力で障害者数に算入したことに意図がなかったとは、まして思えない▼こんな無理が通るのでは道理が引っ込む。そう不満に感じていたら、青森県内の国道で起きた死亡事故で逮捕された容疑者がもっと無理な供述をしていた▼飲酒運転をしたことは認める一方「正常に運転できた」と、危険運転の容疑を否認しているという。4人もの命を奪った事故の原因を胸に手を当てて考えるべきなのに▼「ひらかなで考えたらええねンよ。ひらたい言葉で伝わることはほんまは多いから」。小説家の田辺聖子さんの言葉に共感する。意味を持つ漢字でわざわざ難解にしないでほしい。へりくつはへりくつでしかない。

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