【論説】国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、地球温暖化に関する特別報告書を公表した。世界の平均気温が産業革命前に比べ1・5度上昇した場合の影響を初めてまとめたもので、洪水リスクは2倍になり、世界のサンゴ礁は7~9割が失われるなどと、自然災害や環境面の深刻なリスクが提示されている。

 気温上昇を1・5度に抑えること自体、容易には達成できないとも指摘されている。人類が温暖化に対応できるかどうかの瀬戸際に立つことを示す内容だ。科学者たちの警告を真摯(しんし)に受け止める必要がある。

 IPCCは、科学者や政府関係者らで構成。温暖化に関する科学情報を各国の政策決定者に示すため報告書としてまとめている。今回は6千点を超す文献を元に40カ国91人の専門家が作成、10月上旬に公表した。

 報告書は、現時点で1度の上昇が起きており、このままなら2030~52年の間に1・5度に達する恐れがあるとする。その場合の洪水リスクは1976~05年の水準に比べ2倍。海面は86~05年比で26~77センチ上昇する。生物は昆虫の6%、脊椎動物の4%、植物の8%が半減するという。

 影響がより深刻な上昇2度の場合も比較している。洪水リスクは2・7倍まで高まり、サンゴ礁はほぼ全滅。1・5度の場合よりも海面は約10センチ高くなり、影響を受ける生物種の数は2~3倍になる。1・5度では頻度が100年に1回という夏場の北極の氷消失も10年に1回に激増する。

 上昇を少なくとも1・5度に抑える重要性を明確に示したデータだが、それには二酸化炭素排出量を30年までに10年比で約45%減らし、50年ごろゼロにしなければならないとも分析。不可能とはいえないまでも極めて困難な道だ。

 気温が1度高くなった現状でも、猛暑や豪雨などの極端な気象につながっている可能性を今年は痛感させられたばかり。標高の低い島国や、貧困のため適応能力がない発展途上国はさらに過酷な影響を受けるだろう。温暖化リスクを可能な限り抑えなければ「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成はあり得ない。

 20年に始まるパリ協定の目標は「気温上昇を2度未満、できれば1・5度」に抑えること。しかし、日本を含む各国の現状の取り組みでは、2度未満の達成すらおぼつかないという現実がある。

 政府は、温暖化防止の長期戦略を議論しているが時間は限られる。炭素の価格付け(カーボンプライシング)、再生可能エネルギー拡大、大気中の二酸化炭素除去など、取り組むべき技術開発や新たな政策は数多い。企業や大学、自治体、NPOなどの「非国家」との連携強化も不可欠だ。

 今年12月にはパリ協定の実施ルールが作られる予定だが、報告書を踏まえればこれはあくまで最低限と認識しなくてはならない。さらに踏み込んだ議論に各国が一刻も早く取りかからねば手遅れになる。日本は先導役を果たすべきだ。

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